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January 27, 2005

愛と哀しみのボレロ

有吉京子『SWAN ― 白鳥』を読了したんですが、これ予想以上に面白かったです。「芸術スポ根少女マンガ」ではあるのですが、結構スポ根より芸術に比重があるというか。主人公がクラシックから始めて基礎を身につけ、モダンで名声を得て、再びクラシックに回帰してゆく、という筋道は個人的には若干違和感がありますが。でもクラシックからモダンに入っていくあたりで、主人公が自己の芸術について悩むんですが、ここが結構突っ込んでてよかったです。振付師とは独立した創作者としての舞踊家の個性表現とは、みたいな。作中では、クラシックでは役の解釈を通じた内因表現、感情表現のあり方を個性そのものと捉えていた主人公が、モダンでどうすればいいのか悩むんですね。このマンガで感情表現と個性がここまで明瞭に分離されてくるとは思ってませんでした。結局、生の全体性の体現としての表現、みたいな、生の哲学みたいな感じで(作中では「感性の世界」といういいかたでしたが)新たな個性表現を獲得していくわけですが。やー良かったです、マジで。

で、そのイキオイで『愛と哀しみのボレロ』を観ました。バレエ映画、というほどバレエのシーンは多くないんですが、たったあれだけでも Jorge Donnはとっても魅力的でした。ちょっと DVD とか買ってしまうかも…。映画自体はずいぶん前に観たもののほとんど覚えてませんでしたが、これもいい映画ですねー。なんかすごい久しぶりに映画らしい映画を観た気がします。今どきの売れ筋映画がいかに説明的に物語を展開してることか、この映画が極力セリフなどよりも映像に語らせているのを見ると、改めて感じてしまいますね。時々使われる長回しや引きの画もすごくうまいし。こういうの、また観たいです。うん。

話はもどりますが『Swan』では憧れの人としてモーリス・ベジャールが言及されたりバランシンが出てきたりするんですが、うーん、巨人の星に長嶋が出てくるのとは何か違う、やっぱり日本における野球はドメスティックなものなのかしら、とか思ってしまいました…。

投稿者 ryoji : January 27, 2005 01:51 AM

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