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November 12, 2005

『宮殿とモスクの至宝 ― V&A 美術館所蔵イスラム美術展』 @ 世田谷美術館

あまり見てないものを見てみよう、ということで、『宮殿とモスクの至宝 ― V&A 美術館所蔵イスラム美術展』 @ 世田谷美術館を観てきました。Victoria & Albert Museumイスラム美術ギャラリーが改装され、2006年夏に「ジャミール・ギャラリー」としてオープンするのにあわせた国際巡回展です。

偶像崇拝がタブーのイスラム圏の美術って、絵画や彫刻よりも工芸がとても発展してるんですよね。今回の展覧会も、陶磁器、金工や染織を中心にしたものでした。あ、そうそう、あとガラスね。観てて特に興味を引かれたのは、まず「聖なる言葉:文字の意匠」と題された展示室。クルアーンからの引用や、パトロンを称えた言葉、所有者のための吉祥の言葉などが、様々な工芸品にデザインとして組みこまれていたのが大変面白かったです。クルアーンの写本のタイポグラフィも面白いし(あー、これ読めたらなぁ…)、タイルや瓶、剣などに、色々な形で使われているんですよね。アラビア文字独特の文様的な形態が、草花文などに馴染むようにして一体になってるという感じで。

それから、こないだ『華麗なる伊万里、雅の京焼』を観たせいというのもあると思いますが、陶磁器もおもしろい。中国磁器のあの大人気ない透明感のある白がほしくて、「フリットウェア」と呼ばれる技法が産まれて、白い陶器に色をのせて似せて作ったりしたんですね。中国の磁器ってホントに世界中で真似されてきたんですねー。あとイスラムの陶器といえば、あの特徴的なラスター彩。虹色にキラキラとしていて目を楽しませてくれます。

図像表現と宗教との関係についても、まったく図像表現が使われなかったわけではなくて、宗教施設とは関係のない日用品では結構使われてたことなどもわかりました。あと王朝ごとに様式が対立するように変わっていくというのも興味深いですね。モノとしていいなーと思ったのは、タイル製の天板がついたテーブル。タイルもターコイズブルーとアクセントに赤で綺麗だし、脚は黒檀に象嵌の凝ったつくりで、ちょっぴり螺鈿もついてるというもの。それとそれと、金工では瓶とかが結構出てたんですけど、法隆寺伝来の竜首水瓶とか思いだしてしまいました。そういやガラス器とかもあっちのほうから来たものが伝わってるんですよねー…。

てなわけで、楽しめました。カタログは V&A で作られたものを翻訳したものですが、日本の展覧会カタログとちょっと趣きが違って、全体を通した解説になっていた、読み物として読んでもかなり勉強になりそうです。

投稿者 ryoji : November 12, 2005 10:04 PM

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