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July 08, 2006
ジェフリー・サックス『貧困の終焉―2025年までに世界を変える』
ジェフリー・サックス『貧困の終焉―2025年までに世界を変える』(早川書房、2006年) を読了。
ボリビア、ポーランド、ロシアなど、様々な地域での実践を経験した開発経済を専門とする著者による本です。2025年までに「極度の貧困」を世界から無くすことは可能だということと、そのための方法を述べています。最貧国は「経済発展の梯子の一番下の段に足をかけることができない」ため、先進国の援助が是非とも必要であること、また援助というのはすでに約束されている (が、ほとんど果たされていない) GNP の 0.7% でよいこと。基本的なインフラストラクチャーと医療と教育、科学技術と適切な自由貿易、そういった条件をととのえることができれば、経済発展の「梯子」に足をかけることができ、あとは自力でのぼっていけるだろうこと。グローバルな協力のためには国連がイニシアチブを発揮すべきこと。実証的で大変力強い論述に、引き込まれてしまいました。
また、著者はよくある反応にも丁寧に応えます。
こういってはなんだが、アフリカの教育水準はあまりにも低く、他の地域でうまくいっている計画もアフリカでは失敗している。アフリカは汚職まみれで、独裁がはびこっている。現代的な価値観も制度もないので、自由市場経済はとても運営できず、成功はとうてい無理である。そうなると、いやでも暗い将来像が浮かんでくる。私たちの援助でアフリカの子供たちが命を永らえたとしよう。その先はどうなる? 人口爆発が起こり、腹をすかせた大人のアフリカ人が増えるだけだ。これでは何も解決しない。
ここまで読んでうなずきかけた人は、どうかこの先をじっくり読んでもらいたい。ここまでの文章は (…中略…) よくある考え方だが、まちがっている。(p.427, 強調引用者)
この本ではアメリカの政策についてもわりに言及しているのですが、日本が ODA に使ってるお金ってどれくらい? と資料(pdf)を見てみると、7,600億円くらい。GNP とだいたい数字が近い GDP が500兆円くらいらしいので、そうするとえーと、0.15% くらい。0.7% にはほど遠いですね。むー。ちなみに平成18年度予算では防衛費は4兆8000億円くらい。
この本、序文を U2 のボノが書いてるんですよね。宣伝効果としてはどうなのかよくわかりませんが。現実をしっかり見据えつつ希望を教えてくれるような、こういう本は本当に沢山読まれればいいんだけど…。でもミサイル騒ぎでまたぞろ「戦に備えよ!」と呼ばわる声が大きくなってて、なんかもう煽れるものは限界までとことん煽れって感じだしなぁ…。
投稿者 ryoji : July 8, 2006 09:32 PM
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