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河口龍夫『封印された時間』展@水戸芸術館現代美術ギャラリー[美術展]

水戸芸の中庭には温室、エントランスホールには「関係─腰掛た水」がある。エントランスホールの高い天井を利用して、腰掛けの上の黄色い容器に張られた水の水面に垂が吊されている。「フーコーの振り子」を思わせるものだ。今回の作品ではこれが一番気に入った。

最初の展示室の床には銅版が敷き詰められていて、電流が流されている。「関係─エネルギー」のバリエーションだ。長い通路には「関係─時のフロッタージュ」。化石のフロッタージュを密蝋で黄色くされた箱に収めた作品がずらり300弱ならんでいる。黄色い通路。

ほかに「関係─水・鰓呼吸する視覚」でも黄色い密蝋の箱に水を張っているなど、黄色が印象的な展覧会だった。鉛と種子の作品も当然あるのだが、「関係─拡大・新聞」などもあり、「とにかく鉛で封印」という感じではなかった。やはり鉛と種子だけで構成される作品はとくに目新しいものではない。個人的にはそれは「関係─蓮の時・3000年の夢」またはその前後の作品で完成されてしまったという印象をもっているので、新しいタイプの作品を見られたのが良かった。

オープニングレクチャーでは90年以降の作品について語っていたが、まあだいたい大学で聞いたような話が中心である。今回の展覧会のドローイングを見せながら「この展覧会から発散するエネルギー」とかよくわからない「作家っぽい」発言などもあった。また、質問の中に「時間という要素はあなたにとってどういうものか」といった意味のものがあったが、他の質問のように上手には答えられなかったように思えた。やはり大事なことは口では言えないのかなあ、などと思ってしまう。

ともあれ、この展覧会では、河口龍夫にとってはやはり放射能や種子よりも「関係」がもっとも重要な観念なのだと再認識した。「腰掛た椅子」や「拡大・新聞」あるいは「時のフロッタージュ」では「封印すること」さえ重要ではなくなっていると思える。もう一つつくづく思ったのは、なんでも作品にしてしまうスキルである。これはやはり大したものだ。


Murata Ryoji - <ryoji@cc.rim.or.jp>
$Date: 1998/08/09$