『マンガの時代 ─ 手塚治虫からエヴァンゲリオンまで』展 @ 東京都現代美術館 [美術展]

ここ2年ほど、マンガを読んでいない。学生の時は手近にあったので、よく貪るように 読んだのだが。しかし今回の展覧会を見てあらためて自分がどれほどマンガと 接してきたかがよくわかる。

美術館でマンガの展覧会をやることについては、おそらく批判もあることだろう。 しかし、これほど巨大な市場をもちながら、まとまった専門の博物館もないのだし、 たまにはいいんじゃないか。それに美術館のような場所でなければ、このような 文化史的な視点をもってまとめることは難しいと思う。
ともあれ、一口にマンガと言ってもいろいろだよね、という至極平凡な感想を まず持った。

やはり嬉しいのは長く親しんだマンガ家の生原稿だろう。実はマンガの原稿を見るのは 初めてで、案外きれいなものだな、と思った。カラー原稿より白黒の原稿のほうが 魅力的に見えたのも意外だった。
ストーリーマンガがどうしても中心だし、なにしろ数が多いので見せ方が難しそう だが、そこは感動的なラストシーンや名セリフの場面をうまくセレクトしている。 サーヴィス精神旺盛な展示だ。いちいち読んでたらキリがない、とは思うものの、 どうしても読んでしまう。面白いのだ。

ひょっとすると、これだけ無心になって観た展覧会はないかも知れない。もちろん 無心で観ることがもっとも良い経験だと思うわけではない。むしろ例えば現代美術では 考えるきっかけになるような作品が好きだし、裏返してみれば、思考停止を催す とも言えるかも知れない。

最後に現代美術の作品が展示されていたが、立ち止まる観客は見当たらなかった。 マンガに比べて、それらがいかに人々から離れた存在であるかが如実にわかる。 まあ、それほど良い作品があったとも思えないのだが。面白かったのは村上隆の 日本画的な手法で描かれた「DOB君」の絵くらいだろうか。確かに他の「ポップ猿」 とは違うのかも知れない。西山美なコのものなど、観るのは2度めなのだが、まったく 納得いかない。

現代美術はさておき、久しぶりにマンガを読みたくなった。


Review 1998 [Index]
Murata Ryoji - $Date: 1998/11/20$