'70年代後半から木材を使った大規模なインスタレーションを精力的に発表し続けている 川俣正の、近年のフランスでのプロジェクトを記録したドキュメンタリーの監督 Gilles Coudert とのトークショウが、第4回アート・ドキュメンタリー映画祭を 開催中のユーロスペースで行なわれた。
Gilles Coudert は現在進行中のプロジェクト_「コールマイン田川」_でも 川俣と共に活動している。まずはそのプロジェクトの紹介、そしてフランスでの プロジェクトでの共同作業の様子が語られた。Gilles Coudert はアーティストの 仕事を映像化する作業を中心にしているとのこと。川俣は Coudert との活動に絡めて 素材を集めて組み立てていく Coudert の作業が自分のそれと通じるものがある、 といった話をしていたが、やや説得力に欠けるか。
話の中で川俣が自分のことを現場主義と言っていたが、割に古風なアーティストなの かもしれない。しかし作業を通じて練り上げられたコンセプトは非常にわかりやすい。 仮設的な作品からパーマネントなプロジェクトに移りつつあるのでは、との質問に 対して「どれだけ長い期間設置されるものでもやはり仮設であって、世界中で展開され てきたプロジェクトがすべて一つの未完のプロジェクトのように思える」と答えて いたのが印象に残っている。
しかし、終盤に Gilles Coudert が経済的な基盤や予算についての考慮といった 側面に言及していて、むしろ僕としてはその辺の話に興味が持てたのだが。
トークショウに続いて3本のビデオが上映された。 3本で一つのプログラムとなっており、料金は 1500円。
ビデオ自体は良くできたドキュメンタリーというところか。 1992年に 世田谷美術館 で行なわれた _『廃虚としてのわが家』展_ で國安孝晶の作品設置を手伝った 時のことを、ビデオを見ながら僕はずっと思い出していた。共同作業の楽しさや 肉体労働の心地よい疲労が甦る。もちろん、國安と川俣では違うのだけれど。 それでも、川俣のプロジェクトに参加した人々の言葉には、とても共感してしまった。 ああいう大規模な作品を共同で作っていると、少なくともその時は、それが「誰の」 作品であるかなどということはあまり気にならなくなるのだ。ただ疲労と達成感だけが 強く印象づけられるから。実は手伝うのが一番いい観賞法かも知れない、なんて 思ってしまった。
川俣の新しいプロジェクト _「東京プロジェクト ─ New Housing Plan」_ が来年1月からギャルリー・ドゥで予定されている。