Joaquin Ivars は初めて聞く名前だった。現代美術製作所での展覧会と同時に 京都の西陣北座でも展示をしているようだ。こういう企画は、なかなか両方見ることが できなくて悩ましい。
現代美術製作所では「消滅する空間」としてシンプルなものを配置した、とのこと。 広い方スペースでは黒いガムテープを床や壁に貼って、破線で空間を仕切るような インスタレーション。破線にはところどころ小さな出っぱりがあって、そこに 現地調達したビーチサンダルがおかれている。一つ一つの囲いの大きさは、まちまち だが人ひとりが寝そべることができるくらいか。プライヴェートな小さな部屋、 といったものを思わせる。また、床だけでなく壁にも破線があるために「仕切り」が 空間的に想像できて面白い。破線の途切れた部分を見ながら、僕は高校のときに習った 細胞膜の選択的透過性のことを思い出した。
奥のスペースでは等身大の人型にシーツをかぶせたものと、ビデオが展示されている。
人型の方はなんだかよくわからない。ビデオは、Ivars が大阪の京橋駅前で行なった
パフォーマンス。地面にガムテープで破線の囲いを作り、その中に彼がいる。
口にガムテープを貼って沈黙している様は、何かの行者のような感じだった。
回りに人が集まっていて、警官とのやりとりもあったようだが、詳しくはわからない。
ハプニング的ではあるけれど、かなりおとなしくてストイックな雰囲気だった。
ただ、ビデオが5秒おきに途切れるのが「破線を意味している」というのは、ちょっと
無理があるかもしれない。
破線のビーチサンダルや人型の「わからなさ」が妙にひっかかる。会場にあった ポートフォリオを見ると、破線と何かしら日常的な物体の組み合わせで インスタレーションを作ることが多いようだ。ばらばらの要素を組み合わせても、 対立や意味の劇的な異化ではなくて、もっと もの静かな変化を起こしているようだ。 他の作品も見てみたい。