中山 ダイスケ 展

スタジオ食堂での活動でも 知られる中山 ダイスケが、ニューヨークから帰国して初めての個展。 これまで観たことがなかったので、最終日になってしまったけれど行ってきた。

作品はファッション広告のような雰囲気をもった写真とビデオ、ドローイング数点。 写真では、男女が剣で互いを突き刺したり、ベッドの上で戯れるようにナイフで 相手の体を刺している。ナイフがなければ親密な恋人達を写し取ったスナップショット のような写真だが、いかにも切れ味のよさそうなナイフがそれを強烈に異化していて 面白い。

ビデオもそんな恋人達の奇妙な日常の一場面といった感じだ。 さわやかな光の差し込む部屋で、朝目覚めたばかりなのだろうか、 下着姿の男女が小さなテーブルの上でナイフを研いでいる。 談笑し、テーブルの下で足を絡ませ、指をもつれさせるようにナイフを弄ぶ姿は 魅惑的でさえある。写真にあるような情景 ─ 互いを刺し合う ─ がこれから 始まるようだ。ちょっと上品なテレビコマーシャルのような質感のビデオ。

さしつさされつ、という男女の映像はエロチックでもあるのだが、 人を刺すという行為の陰惨さが強調されることを、広告写真のようなスマートさで 免れている (例えば、刺された人物は出血していない)。その代わりに人間関係の中の ある種の「刺」を想起させられるようだ。恋人達は本当に親密だろうか。


Review 1999[Index]
Murata Ryoji - <ryoji@cc.rim.or.jp>
$Date: 1999/01/10$