中村 政人 "QSC+mV"

都市との密接なつながりを持つ作品を展開してきた 中村 政人。 今回はマクドナルドの M マークを丸く並べたインスタレーションだ。

会場内は黄色い光で満たされて、どこか非現実的だ。マクドナルドのマークは 見なれたもののはずなのに、奇妙な感じを受ける。たぶん、背景が白いせいだ。 僕達がいつもこのマークを見る時はふつう、背景に赤がある。この抽出された マークの下を潜り、見回すと、視野全体がマクドナルドの黄色い光で覆われる。

フライヤによると展覧会タイトルの "QSC+mV" は、

品質(Quality)とサービスと(Service)、清潔(Clean)が結びついて価値(Value)を 生むというマクドナルドの経営理念を質・コミュニケーション・純粋と読み替え、 さらにアートとしての係数(m)を加えた。

ものだという。つまりマクドナルドの理念をアートの理念に読み替えているのだ。

"QSC+V" というのはマクドナルドのみならず、近代化のあらゆる 場面で追求された理念だろう。マクドナルドは外食産業の近代化の極みだ。 その理念をアートにもってくることで、近代芸術の理念 ─ モダニズム ─ と重ねあわせているようでもある。 ただ、係数 m がどういう役割を果たしているのか、また果たし得るのかは、 僕にはよくわからないけれども。 あるいはこの作品も、それを問いかけているのかもしれない。


Review 1999[Index]
Murata Ryoji - <ryoji@cc.rim.or.jp>
$Date: 1999/01/24$