『エンプティ・ガーデン』

館外での展示が多く、散歩するようにして観られる展覧会。 天気の良い日に行くことができた。

Olaf Nicolai の街燈は、美術館そばの路上のペインティングと同様、 色といい形といい、とてもポップな雰囲気だ。 上野公園のホームレスのテントを元にした作品は、そのまんまという感じだが。

Lois Weinberger は美術館の屋上に庭をつくっている。ワークショップチーム によって一年以上観察されているのだが、庭そのものはひどく雑然としている。 ただ美術館の屋上に上がることはなかなかできないので、 そいういう意味ではいい機会かもしれない。Weinberger は周囲の駐車場でも ドリルでアスファルトを掘り崩して植物を植えた作品を展示しているが、 こじんまりとしているうえ、中途半端に作為的な感じがしてしまう。 その駐車場の近くには一段低い墓地があるのだが、その眺めの方が僕には発見 だった。出品数では Weinberger が一番多いのだが、粘土のミニチュアに 「偶然苔が生息してできた作品」なんて、ホントかよ。

粟野ユミトは屋外階段に無数のストローを設置している。そこから街の景色を 覗くとストロー一本分しか見えない。自分が移動するにつれてその小さな 視野も移動していくさまが、ちょっと面白かった。

Carsten Nicolai も近くの建築家会館の中庭にベンチを設置している。 館内でのインスタレーションのほうが好きだが、普段行くことのない 場所を散歩する機会にはなった。また、ショルダースピーカーを装着して その場所まで移動することになっていて、スピーカーからは 電子音が流れているのだが、特に新鮮さはなかった。 ガイドには「観客が自分を取り巻くものにもうちょっと 注意を向け、感受性を大いに働かせるための装置」とあるのだが。
夕方でもあり、到着した庭で秋の虫の声が聞こえてきたので、 僕はスピーカーを外してしまった。

それにしても何となく気持ちの悪さがただよう展覧会だった。 ガイドにある説明などを読んでも妙にナイーヴだし、 どこか自己満足的な雰囲気があるのは否めないと思う。
この展覧会は Joseph Beuys の庭が出発点になっているそうだ。 ドクメンタ7 に Beuys が出していた「7千本の樫の木」の写真も 展示されていた。 ドクメンタの開催地カッセルでは、樫の木は育たないと僕は聞いている。 今はどうなっているのだろうか。


Review 1999[Index]
Murata Ryoji - <ryoji@cc.rim.or.jp>
$Date: 1999/09/26$