『日本ゼロ年』

椹木野衣は何がしたいんだろう。あの本、『日本・現代・美術』(新潮社, 1998) は結構影響があったみたいだけど(今年の展覧会には戦後の現代美術を 振りかえるような企画が少くなかったし)、みんなあんな暗い話をまに受けたの だろうか。それともそれっぽくするのが今年はウケると踏んだからか。 そして、またそうやって「真摯に苦悶」してみせるというわけなのか。 それもまた滑稽だとは思わないのだろうか。

作品の中では、大竹 伸朗 の宇和島駅のネオンが水戸芸の建物に妙に ハマっていたのが気に入った。でも点滅させるとパチンコ屋みたいでもある。 あと 成田 亨 のイラストは、やはり素敵だ。もちろんこんな所に飾って 正統的文化の文脈に回収する必要なんかどこにもないと思うけれど。 やることがいちいちイヤらしい。

一番ショボかったのが 村上 隆 の『シーブリーズ』。「目も眩むような強烈な光」 「"区分け"をすべて無化するほどの、圧倒的な光」と解説にあるけれど、 「目」をナメてはいけない。

まあもともと 椹木 野衣 とは趣味が合わないので、別に期待してたわけではない。 けれど、どうも自分の趣味(または悪趣味)を正当化するために歴史を 利用してるように見えるところがあって、それが気にくわないのだ。 「現代美術をリセット」とか言ってるけど、僕には十年一日の如き展覧会と しか映らなかった。というか、日本の美術とは本来こういうものであるはずだ、 みたいな押し付けがましい正当性が入ったぶん、タチが悪くなったかもしれない。


Review 1999[Index]
Murata Ryoji - <ryoji@cc.rim.or.jp>
$Date: 1999/12/25$