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December 15, 2007

日本彫刻の近代@東京国立近代美術館

日本彫刻の近代@東京国立近代美術館を観てきました。明治から60年代くらいまでの日本の彫刻をクロノロジカルに一覧するという、ありそうであまりない企画展。意外なほど興味深い展示でした。日本の彫刻を時系列でまとめて見るというのは、実はそんなに機会がないんですよね。だから、たとえばこういう歴史的な流れの中に舟越保武とか柳原義達とか、あるいは佐藤忠良などの作品を置いてみると、なるほどこういう風に見えてくるのかー、というか。

個人的な興味としては、やはり近代に彫刻というジャンルが受容されていく過程が面白かったですね。高村光雲の「老猿」から展示は始まっているんですが、光雲という人は仏師として修行して、彫刻家というよりは「木彫職人」としてやっていた人なんですね。だから工芸品というか、「置き物」としての「木彫り(きぼり)」から木造彫刻へと、つまりは西洋的な彫刻の価値観を受容していく過程での様々が、非常に興味を引かれるものでした。

で、カタログ所収の論文で言及されていた高村光雲『幕末維新懐古談』(岩波文庫)を購入してしまいました。こ、これが面白い…。ホント彫刻の芸術家というよりは江戸の職人といった風で、実にその語りに魅力が溢れています。たとえば、廃仏毀釈で仏師の仕事が減り、かわりに輸出産業としての彫物で象牙彫りが流行し、旭玉山などが売れているころ、象牙彫りを勧められた光雲はこんな風に断わっています。

「かねて師匠から小刀を讓られて、今さら、今日に及び生計のためと申して、その家業の木彫りを棄てて牙彫りをやるというわけには参りません。打ち開けたお話をすれば、全く、私は、象牙を嫌なんです。イヤなのです。どうか、私の趣意をお察し下すって、こればかりは他の方へお廻しを願いたい」

この本を読んで光雲の彫刻を見ると、また一層違った味わいがありそうです。

投稿者 ryoji : December 15, 2007 09:04 PM

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