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September 19, 2008

ベネッセハウス

さて、丸亀から電車を間違えて瀬戸大橋を渡ってしまったものの、なんとか岡山側からフェリーで直島まで移動できました。直島のフェリー乗り場から、初日の宿泊場所のベネッセハウス・ミュージアムまでバスで移動。部屋は Sol LeWitt の作品があるので選んだのですが、眺めもとてもいいし、バスルームからも海が見えるという贅沢なつくりでした。

バスで移動しながら、途中にある小中学校や、ちょっと変わった役場の建物、本村周辺の民家の様子などが見えました。来る前は、「島」というイメージからもっとさびれかかった雰囲気を何となく想像してたのですが、全然そんなことはなくて、むしろ元々結構経済的にも豊かな島のように感じられました。ベネッセハウスがあるエリアは南側なのですが、ちょうど反対の北側には三菱マテリアルの精錬所があるんですね。あとで家プロジェクトを回ったときに地元ボランティアの方が「この島はベネッセとかよりも、もともと三菱でもってるようなものだ」というようなことをおっしゃっていました。確かに三菱マテリアルのサイトにある年表を見ると、1917年にはすでに三菱の中央精錬所として設立され、翌年には反射炉の創業が開始されています。と、いま年表を見ていて気づいたのですが、1918年に「粗銅産出月300T産開始」とあります。旅行の3日目には犬島に行ったのですが、こちらも銅の精錬所ですが、銅価格の暴落により1919年には操業を停止しているんですよね。三菱の精錬所は暴落を乗りきったということなんでしょうか。このあたりの事情がもっとわかると面白そうです。


さて、ベネッセハウス・ミュージアムは美術館にホテルがついているような、ホテルに美術館がついているような、不思議な施設です。いずれにせよ今回泊まってみて思ったのは、これはここに泊まって美術館を楽しむのがやはり良いな、ということ。周囲も含めてここは完全にいわゆるリゾート地になっているわけですが、リゾートで休養をとるという体験のなかに美術がある、という枠組みで見るのが、素直というかストレートな楽しみかたのように思います。部屋で休んだ後も夜遅くまで作品が見られるとか、そういったところまで含めてのアートサイトという気がします。

館内の作品では、やはり杉本博の写真が屋外の壁面に展示されているのが驚きでした。こんな所に写真作品を置くなんて、もういつダメになっても構わないということですよね。なんという贅沢。しかし明い陽光の中で海の風景と一緒に見る杉本の水平線には、確かに他では味わえない感覚があります。もう一つ気に入ったのはジェニファー・バートレット (Jennifer Bartlett) の《黄色と黒のボート》。海岸に黄色と黒のボートが描かれた絵画と、その絵画の前に置かれたやはり黄色と黒のボートの実体が組合された作品なのですが、実は野外の本物の海岸にも、やはり同じボートが設置されているんですよね。こういう作品はわりと好きです。

またミュージアムから小さなモノレールで上にあるオーバルという宿泊施設に上がれます。こちらには泊まらなかったのでもちろん中は見られませんが、建物を見るだけでもなかなか面白かったですよ。楕円形の開口部から見える空も、その真下にある水もすがすがしいし、開口部の上にまわれば芝生が敷いてあったりして、とても凝ったつくりでした。


2日目と3日目に泊まったのは、ちょっと離れた場所にあるパーク。こちらはロビーやラウンジに作品がありますが、ほぼ完全にホテルですね。使った部屋には李禹煥のリトグラフがかかっていました。部屋からビーチが見え、その手前の開けた場所にニキ・ド・サンファールなどの彫刻があります。ニキの彫刻って、こういう所にあるととても表層的に見えるというか…。あと草間彌生のかぼちゃの所には、いつも人が集っていました。


食事もよかったし、部屋も居心地よかったです。あと部屋にはテレビがないんですよね。普段結構テレビをつけっぱなしにしてることが多かったのですが、テレビがないとそれだけでとても静かに過ごせるのだ、ということに嫌というほど気づかされました…。

投稿者 ryoji : September 19, 2008 11:35 AM

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