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December 30, 2009

2009年に印象に残った展覧会

今年もそんなに沢山は観られなかったのですが、強く印象に残った展覧会がいくつかあったので備忘を兼ねて。

まず筆頭に挙げたいのは、「画家の眼差し、レンズの眼」@神奈川県立近代美術館葉山館です。19世紀の日本で洋画、写真、印刷の受容が一挙に進んでいくという時代の背景の中で、それらが美術とどのように関わりあっていったのかを検証したもの。メディア環境と視覚の変容という興味深いテーマを真正面から扱った展覧会で、自分にとっては発見も多く、非常にわくわくする展覧会でした。ここしばらく、近代日本美術については、様々な角度からの再検証が行われて展覧会などで成果を見せてくれていますが、この展覧会もそうしたものの一つとして素晴しいと思いました。もう、これこれ、こういうの観たいんだよ僕は!という感じです。

次に、年末に観たばかりなので印象が強いというのもありますが、「文化資源としての<炭鉱>展」@目黒区美術館。こちらはあちこちで話題になっていたとおりで、炭鉱という主題からのアプローチがこれほど豊かに結実するとは、単純に驚きました。元坑夫の絵の率直な眼差しの強さや、画家や写真家が炭鉱に見たものの広がりが、ストレートに伝わってきて、展覧会にはこんなこともできるんだなぁ、と思わされました。

それから東京国立近代美術館での「ヴィデオを待ちながら」。ビデオアートを自分が勉強していたこともあって、ある程度背景は頭に入っていた状態で観たというのもありますが。しかし単純に、カタログや図版では作品の様子がほとんど掴めないビデオアート作品をまとめて観られる機会として、とても貴重だったと思います。またカタログにもロザリンド・クラウスらの論文が載っていますが、やはりフォルマリズム以後の批評との関わりという面でも、かなり知的な面白さもありました。

また、コレクション展で特によかったと思うのは「かたちは、うつる」@国立西洋美術館です。50周年記念事業のこの展覧会では、同館が形成してきた版画コレクションを「うつる」というキーワードを手がかりに俯瞰しようとするものです。「うつる/うつす」というのは日本語ですが、映像(この言葉もまたピッタリ重なる英語には訳せませんが)というものの性質をよく表しているし、それを複製技術である版画において観ていくのもうまく嵌っていたと思います。完成度の高いコレクション展でした。まあ単純にデューラーすげー、ゴヤすげー、というのもありますが。

最後にもう一つ挙げるとするなら、「純粋なる形象 ディーター・ラムスの時代」@府中市美術館でしょうか。ラムスの考え方やスケッチや原則も面白かったのですが。それよりなにより、もうとにかくかわいい。欲しい。このプラスチックの質感がっ!みたいな個人的なフェティスズムを刺激されまくりの展覧会でした。

特に強く印象が残ってるというと、だいたいこのあたりでしょうか。やはり基本的には、なにかチャレンジングなところのある展覧会が観ていて面白いです。出品されている作品の良さと、展覧会としての面白さはやはり別というところがあって。素晴しい作品との出会いも嬉しいものですが、それと同じくらい知的な刺激があったり思考を促されたりする展覧会が好きなんですよね。来年もそういう展覧会をたくさん観たいものです。

投稿者 ryoji : December 30, 2009 11:33 AM

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