實松 亮 『水平線のつくりかた』展

昨年8月の個展を観た時には、 その時ととほぼ同じ内容と聞いていたのだが、 全然違う作品を作ることになったようだ。

海を撮ったビデオを壁面にプロジェクトしているのだが、 腰の高さくらいの大きな台が壁に接していて、壁と台の上面とで90度に折れ曲がった スクリーンとしている。そして壁と台の接線にビデオの水平線があたるように 映し出している。台の上面に映った映像の下半分は、プロジェクターの光を 横切るような格好となり、手前では極端に幅が狭くなっている。

平面上で現れるはずの奥行き感が現実の奥行きになっていると同時に、 画面が歪んでいるためにイリュージョンを斜にして見せていてる。 また、水平線より上の空は「窓」としての画面のようでありながら、 台の上の海の像と連続していて微妙な位置に置かれているようだ。 軽やかな遊び心が感じられて、僕は前回の作品より面白いと思った。

展覧会の案内状も中央に海の写真が貼ってあって、ちょうど水平線のところで 折り曲げられていた。会場には、これと似たような小さな写真の作品もあった。 ただ、案内状を見た時になんとなく予想できてしまったので、 新鮮味にはやや欠ける感じもしなくはないのだが。


Review 1999[Index]
Murata Ryoji - <ryoji@cc.rim.or.jp>
$Date: 1999/01/10$