Joseph Kosuth といえばコンセプチュアル・アートの最も有名な作家な わけだけれど、実際まとめて作品を見る機会はそんなにない。 今回の展覧会では過去の作品を集めた展示と、この展覧会のための新作が 展示されている。例の有名な『1つと3つの椅子』などもあるのだが、 千葉市美術館の展示にあわせて新たに写真が撮影されたようだ。 この作品には仕様と作り方を記した証書があって、それに従って 作られるようになっているという。つい最近撮影された写真でも1965年の 作品だというのは、ちょっと奇妙な感じ。 Kosuth の作品は物ではなく観念だというけれど、徹底している。
また世界各地でのビルボードなどを使ったプロジェクトの記録も展示されている。 が、こういうのはやはり街中で観たい。それに、ドキュメント自体も そこに付されたコメントも外国語なので、やたら疲れる。
さて、新作『訪問者と外国人、孤立の時代』は、
江戸時代の鎖国をテーマにしたインスタレーションだ。開国前後の文書や、
外国人に関するテクスト、また来客の際のマナーを解説したテクストなどが
壁面にびっしり書きこまれている。ここに来ていきなり部屋中が日本語なので、
言葉が目にストレートに飛びこんでくる。迫力ある作品だ。さっきまで観ていた
外国語のテクストによる作品も、母国語で観たかった。
これらのテクストをじっくり読むのには、とても時間がかかる。
結局すべては読みきれなくて、全体としてそこに何が書かれているのかは
はっきりとはわからずじまいだった。スペクタクルのように押しよせる言葉と、
時間をかけても理解しきれない問いという対比が興味深く感じられた。
言葉を何重にも重ねたグラフィック・デザインや映像がここ数年流行ったけれど、
そこでは意味は一瞬で理解されるものだ。Kosuth のとは全く逆。
とにかく、(良い意味で)やたら疲れる展覧会だった。 「わかりやすさ」が価値をもつ最近の傾向とは相容れないのかもしれないけれど。