宮島 達男 "MEGA DEATH: shout! shout! count!"

L.E.D. のカウンターを使った作品で知られる 宮島 達男 の個展。 去年の第43回ヴェネチア・ビエンナーレに出品していた "MEGA DEATH" をはじめ、ビデオやパフォーマンスの作品も展示されている。 が、やはり見どころはその "MEGA DEATH" だろう。

広い展示室の壁の一面に、青色 L.E.D. のカウンターが並べられ、 これまでの作品の例にもれず 9 から 1 までをカウントしている。 0 は表示されないので、壁面にはつねにいくつかの暗い場所がある。 カウンターは死へ向かう生を暗示している。そしてこれらがある瞬間には全て 消えてしまうのだが、その闇は戦争による大量死 ─具体的には原爆─ を 暗示しているという。なんの前ぶれもなく突然訪れる暗闇は不安にさせるものだ。 しばらくしてから L.E.D. が点灯しはじめるさまにはホッとする。 そういう仕掛で「死と再生」を表現するというのは、とても明確で わかりやすいし、迫力もある。

ところで、青色 L.E.D. の光というのはたいへん美しいものだ。僕はその光を 初めて見たときのことをよく覚えている。大学生だったころ、青色 L.E.D. が 秋葉原あたりで出回るようになって、先輩が当時はまだ一個何千円もした その L.E.D. を買ってきて、僕たちに見せてくれたのだ。教室の電気を消して、 青くか細い光にほれぼれして見入ったものだ。

宮島の作品はこれまでほとんど赤か緑の L.E.D を使っていたと思うのだけれど、 青い光というのはどこか幻想的なところがあって、それがこの作品から 即物的な雰囲気を消しているようだ。会場の壁面はまるで満天の星空のようで、 ロマンチックでさえある。そして全ての L.E.D が消えることを知って 眺めていると、その美しさに見とれながら暗闇の訪れるスペクタクルの瞬間を いまかいまかと待ちのぞんでしまう自分に気がつく。暗闇が大量の死を暗示 していることを思えば、倫理的には大変居心地がわるいのだが。


Review 2000[Index]
Murata Ryoji - <ryoji@cc.rim.or.jp>
$Date: 2000/3/12$