『秋葉原TV 2』

ここは「町おこし」が必要な地方都市なんかじゃなくって、秋葉原なんだ ─ というのが、観ていて確認してしまったこと。たぶん僕が去年の年末に 『取手リ・サイクリング アートプロジェクト』 を経験したせいかも知れないけれど、なんといっても全然街の様子が変わっていない。 去年の『秋葉原TV』を観た時にも感じたことではあるし、 また街を異化するようなものを期待していたわけでもないのだけれど。

『秋葉原TV』は秋葉原電気街の店頭のテレビを使ったビデオアート展だ。 去年に続いて2回目となる今回は、たぶんイヴェントとしてはより 洗練されたんじゃないだろうか。 パフォーマンスもいくつか行なわれたし、DVD も販売していた。CD ジャケット サイズのパンフレットも去年よりはスマートだと思う。さらに、上映されていた 作品も去年より映像的に完成度の高いものが多かったように感じた。

けれど皮肉なことに、そうして洗練されれば洗練されるほど、秋葉原では 埋もれてしまうのだ。ザラついた Lo-Fi 感のある肌あいの作品は それとなく眼をひくが、作りこまれた作品の多くは商業ベースの映像と 見わけがつかない。逆に「作品か?」と思って見たら広告だったり。 じっと観ていれば内容的にアーティスティックなもの だったりするけれど、そんな風に観るなら Command N のような場所で観たほうがいい。 そこなら音もよく聞こえるし ─ そう、音が聞こえないとよくわからない作品が 今年もいくつかあった。あの街で音なんか聞こえるはずはないのに。 この噛みあわなさは正直齒痒い。 なんだか街中で見せるということが、「サイトスペシフィック」という アートの文脈での価値のみで捉えられてるように感じた。

もちろん Command N でゆっくり観れば、個別の作品はそれなりに楽しめる。 作家の名前だけ挙げておけば、Josep M. Martin, Geert Mul, Lilian Bourgeat & Luc Adami, Lynne Yamamoto / Lucretia Knapp, 渡部 将之, Manuel Saiz, 中村 政人といったところか。それにしても秋葉原に直接言及した作品が さっぱり面白くなかったのはどうしてだろう?

歩行者天国でのパフォーマンスでは Kristin Lucas の発案による _Simulcast Mobile Kit #1_ を観ることができた。オレンジ色のツナギに アンテナつきのヘルメットを被った「サイマルキャスターズ」が歩行者に カプセルに入ったキットを配るというもの。中身は丸めたアルミホイルに 針金がついてるだけのものだが、物体として面白くないし「あなた自身で云々」 というのはスポーツ万能の体育教師みたいで苦手。 そんなものよりも、サイマルキャスターズに群がった人々から彼女らに 沢山の手がニョキニョキとさしだされてる様が面白かった。 そんなに珍しい光景でもないんだけれど、美術方面ではあまり見られないと思う。


Review 2000[Index]
Murata Ryoji - <ryoji@cc.rim.or.jp>
$Date: 2000/3/27$