『原美術館コレクション展 -- Untitled』

原美術館所蔵のコレクションから無題の作品やそれに類する題名のものを 集めた展覧会。題名がつけられていない、というよりも、「無題」という 題名にすることによって外的な要素を積極的に排除しようとする方向が 見られる作品が多く展示されている。

同じ「無題」でも、その含意は作品によってさまざまだ。例えば Henri Michoaux のそれは無意識の領域や非現実的なイメージへ想像力を誘うように「無題」と されているのに対し、Donald Judd のそれは作品が物体そのものとして 観られるように機能する。というか、そう期待されている。ただいずれにしろ、 美術に固有でないとされる要素 ─ 物語性など ─ から逃れて作品を 自律させようという意識は共通している。

このような「無題」は抽象表現主義以降に顕著になるようだ。タイトルが つけられるようになったのは18世紀中頃だそうだが、作品のあり方や観賞のあり方に 対するイデオロギーが、意外なほどはっきり反映されているように思えた。

たまたま僕が行った時に "Meet the Curator " ということで 学芸員によるガイドがあったのだが、そこで観客が「無題」の作品に好きに タイトルを付けてみる、というちょっとしたワークショップのようなものがあった。 これが意外に面白くて、自分が作品をどう見ているのかが如実にわかる。 他の人達のつけたタイトルを聞いていても、やはり見たいように見ているようだ。 「無題」に込められた意図は、それほど思うようには機能していないのかもしれない。


Review 2000[Index]
Murata Ryoji - <ryoji@cc.rim.or.jp>
$Date: 2000/4/23$