大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ 2000
- Echigo-Tsumari Art Triennial 2000
- 越後妻有6市町村 (十日町市、中里村、津南町、松之山町、川西町)
- 2000/7/20-9/10
藤幡正樹の
『体験する一寸法師』
の
ワークショップ
をやりに、また越後妻有へ。前回は準備で行ったのだが、今回はワークショップと
それに伴う作品データのアップデート、及びデータ採取が目的。先週も行く予定だった
のだけれど、夏風邪で熱が出てしまい、断念。
『体験する一寸法師』は GPS (Global Positioning System) とビデオを利用した作品。
まず、GPS を持って移動しながらビデオを撮影する。で、GPS のデータを3次元に
プロットし、さらにビデオの画像をそのプロットした線上のスクリーンに写す。
GPS のデータは位置と時間を記録しているので、ビデオの時刻とつきあわせると、
ある映像がプロットした地図上のどこで撮影したかがわかる。
ビデオの画像に位置データが与えられるわけだ。だから移動しながら撮影した
映像は、スクリーンごと移動しながら再生されることになる。当然、車だと
スクリーンの移動も早いし、歩きだとゆっくりになったりする。
で、ワークショップでは参加者に GPS を持ってトリエンナーレを見てまわってもらい、
同時にビデオも撮って、そのデータを作品に追加していく。またワークショップ
以外にも、僕と同僚であちこちの作品を記録してきて、この作品がトリエンナーレの
ドキュメントにもなるようにするわけだ。作品を観にいくのが制作の一部になる。
というわけで、仕事を兼ねて見てまわってきた。以下では、おおむね見た順に
記述している。毎週のワークショップの度にデータを追加して、すべての
作品の映像を取り込むのが目標。ていうか全部見るのが目標。
2000/8/5 (Sat)
午前
朝8時にJR高円寺駅に集合。同僚と「こへび隊」の学生一人とで新潟に
向かう。道は結構混雑していて、関越道に入ってからも渋滞。仕方ないので一旦
一般道に降りてから、もう一度関越道に。関越トンネル直前のパーキングで
休憩、冷奴を喰う。GPS とビデオを用意して、関越トンネルの出入口付近を撮影した。
全長11kmのかなり長いトンネルで、現実感が薄れる。
塩沢ICで降りて、
中里村
方面へ。
- 北山善夫『死者へ、生者へ』 @ 旧土倉分校
- 岩崎永人『化石』 @ 清津峡渓谷トンネル
- 流木でできた人体像がトンネルに配置されている。多くは上のほうを見つめて
いるようなのだけど、何を見ているのだろう? 外の渓谷の清々しさとはまた
違う静けさだった。清津峡はナイスなアウトドアスポットなので、
単に泊まりに来るならここがいいな。
- Chris Matthews 『中里かかしの庭』 @ 田尻の河原
田尻で雨が降りはじめた。そういえば、前回準備で来たときも雨が降った。
同僚に雨男と言われつつ、中里トリエンナーレセンターのあるユーモールへ。
地元に滞在しているこへびの学生と落ちあって、昼食。
- 牛波『克雪人』 @ 中里トリエンナーレセンター
- なんなんでしょう、この土偶? 赤いし。ハラにガス灯あるし。妙ではある。
午後
激しい雨の降る中、出発。
- Richard Wilson 『日本に向けて北を定めよ(74°33' 22")』 @ 中里中
- 中学校の校庭につきささる家のフレーム。馬鹿馬鹿しいくらいのシンプルさ。
- Christian Boltanski 『リネン』 @ ゆくらの原っぱ
- Boltanski にしては爽やかな作品かも。ただ、雨だったので
「洗濯物ぬれちゃったよ」って感じでクタっとしていた。晴れた日に見たい。
- 片瀬和夫『夜釣師』 @ ゆくらの原っぱ
雨がやまないので、とりあえず
ミオンなかさと
で温泉に入ることにした。露天風呂からは信濃川も少し見え、かなり気持ちいい。
ここの周辺には、いくつかの作品がまとまって見られる。
- 小本章『自然との共生』
- Jaume Plensa 『鳥たちの家』
- 磯辺行久『川はどこに行った』
- 以前の川筋にそって黄色い杭が打ってある。
そういえば取手にも、治水によって川筋が変わったところがあった。
それ程感傷的な印象もないし、広範囲で、見応えがある。
- 坂口寛敏『暖かいイメージのために -- 信濃川』
ちょっと離れた所には、黄桜の丘。
- Hong Sung-Do 『妻有で育つ木』
- Olu Oguibe 『いちばん長い川』
- 公募した詩を刻んだ電柱と、仮説の図書館。これらの関係はよくわからない
けど、「この川のむこう側には好きな人」なんて詩(句?)はわりに好き。
宿泊予定の
十日町
に向かう途中でも、ちょっと道を間違えつつ、いくつか作品を。
- Lee Bul 『水の女神』 @ 弁天池付近
- 最初は弁天池に設置する予定だったらしいんだけど、どうもいわく付きの池で
猛反対にあって近くの違う池になったのだとか。蓮の花が咲いていて、池は
綺麗だった。作品は、むしろ邪魔かも。
- 鈴木寅二啓之『軌道』 @ 伊達八幡神社
- Hossein Valamanesh 『雪の記憶に』 @ 星と森の美術館
- ブナ林に白い梯子のインスタレーション。作業中、ハチに刺されたとかで、
ビクビクしながら見た。関係ないが、美術館の池では鯉が大量に
飼われているのだけど、周りを歩くとうじゃうじゃ付いてきてかなり
気持ちわるい。
さすがに疲れてきた。それに、そろそろ「地域の特性を生かして」とか「自然との
なんとか」とかってストーリーに飽きてきた。ま、「大地の芸術祭」なんだから
そういう作品が多いのは当然かもしれないけど、自然がそれだけで立派なんだもの。
十日町トリエンナーレセンターで夕食、深夜2:00くらいまでビデオの取り込み
などの作業。眠い。トリエンナーレセンターは、あいかわらず雑寝状態だが、
なんか人数が少ない。こへび達はどこに泊まってるんだろう?
2000/8/6 (Sun)
午前
十日町から
川西町
方面へ。
- Joseph Kosuth "Reading Sample(Codex)1',2000 @ 妻有大橋
- アリストテレスのテキストを貼ったサインボード。河原にあると立看板の
ようにしか見えない。あっさりしすぎ。
- 古郡弘『無戸室』 @ 千手神社
- 西野康造『大地と空の間』 @ 旧橘中学校
ここから川西ステージへ。山の中に作品が点在しているので、周るだけでも大変。
ほとんど山のぼりに来た感じになってきた。まずは節黒城跡周辺。
- 吉水浩『森の番人』
- 白川昌生『さわれる風景/城主の座』
- Esther Albardane 『庭師の巨人』
- 地面からにょきにょき巨人の手や足が生えてる。埋まってるということらしい。
とっても可愛い彫刻。でも道が本当に山道なので疲れる。
- 柳健司『空と大地の展望台』
- Jose de Guimaraes 『詩人の瞑想の路』
- Deux Arches 『稜線計画』
- 山の斜面を掘りくずして、石を金網で囲んである。この地方の工法らしい。
ので、この後いくつか本当に工事している箇所を眼にすることに。パッと見では
工事中の場所と区別がつかんぞ。
- Koo Jeong-a 『パンドラズホープ(B.L. に捧ぐ)』
つぎはナカゴ周辺。こっちはだいぶ道がいい。
- 磯崎道佳『3年後に向けた伝言ゲーム + 手作り見張り塔でずいっ〜と越後妻有』
- 斉藤義重『時空』
- 藤原吉志子『レイチェル・カーソンに捧ぐ 〜 4つの小さな物語』
- 『沈黙の春』といえば科学汚染。自然を大切に。全然好みじゃないけど、
農機・重機の類いを置いといてもいいなら、ということでこの場所を
使えることになったそうな。神殿みたいな所に重機が鎮座ましましてる様は、
いかにも皮肉。
- PHスタジオ『河岸段丘』
- 休憩施設。こざっぱりしてて、心やすまる。
- James Turrell 『光の館』
- 屋根にはもちろん穴が。是非宿泊してみたいものだ。風呂がかなりいい感じ。
そろそろ戻らないと、というわけで、十日町への帰りぎわまたいくつか。
- 松宮喜代勝『大地の呼吸』
- 剣持和夫『西永寺本堂 川西 西永寺境内』
- 本堂の中に下げられた写真のインスタレーションの下に、たまたま
地元のおじさんたちが座ってくつろいでた。その図がなんともいえず良い。
もういい加減なんだかわからなくなってきた。こうして書いてみるとタイトルも
似たようなのが多い気がしてきた。うーむ。
ワークショップに必要な買いものをして、そばを喰う。
午後
ワークショップ。が、全然人が集まらず、ヒマなこへびの子達に歩いてきてもらう。
その間、ほとんど休憩というか、お昼寝。今回は携帯電話を利用して、GPS のデータを
随時ダウンロードし、参加者の現在位置をプロット。データにノイズが多くて、
高度がぐちゃぐちゃになってしまった。
夕方になってウチの学生に会ったら、
佐藤時啓のリキシャを漕いでるそうな。これは、ということで、乗せてもらう。
もちろん GPS とビデオ持ちこみで。
- 佐藤時啓のリキシャ
- 作品とは別に、ワークショップで使ったリキシャ。ヴェトナムで作ってきた
極彩色のドハデな自転車。客席が暗室になっていて、上についたレンズから
カメラの原理で外の映像が手元の板に写される。動くカメラオブスキュラ。
単純に楽しい。学生は近所の子供達にすっかり馴染まれてたよう。
ワークショップから帰ってきた子達の GPS データをプロットしてみる。
ビデオは次回追加予定。
夕方は早々に撤収してゆくらの温泉へ。こちらはミオンなかさとと違ってかなり
ドロドロした湯。食事は関越道のサービスエリアで。渋滞もあったが、なんとか
終電にまにあう時間に都内で落としてもらい、取手まで帰る。
この2日はほとんど移動に費やした感じ。天気もだいたい良かったし、
温泉も入ったし、疲れはしたけど楽しめた。妻有の景色もとても良い。というか、
あれだけ美しい棚田とか見てると、正直いって芸術はどうでもよくなってくるような。
Review 2000[Index]
Murata Ryoji
- <ryoji@cc.rim.or.jp>
$Date: 2000/8/7$