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November 10, 2005

島本浣『美術カタログ論』読了

少し前に買った、島本浣『美術カタログ論―記録・記憶・言説』 (三元社、2005年、ISBN4-88303-160-8) を読了しました。面白かったー。競売カタログ、展覧会カタログ、美術館カタログ、カタログ・レゾネのそれぞれについて、歴史的な背景とともに概観できる前半もとても勉強になりましたし、カタログと美術史、カタログとタイトルといったテーマによる後半も、非常に興味深く読みました。

読み始めたときには、どちらかというとカタログに表されたディスクリプションの変遷みたいなものがわかるといいな、というつもりだったのですが、そしてその期待は充分満たされたのですが、それ以上に、美術史の中におけるカタログという場のもつ問題の広がりに、目からウロコの落ちる思いでした。特に、初期には展示空間の表象という側面の強かったカタログが、分類や年代史的配列によって現実の空間から離れていき、さらに美術史の言説を支えるデータベースとしてのインデックス的空間へと変容していく、という見取り図には、考えさせられました。

そもそも分類と記述の形式の内に美術史を表象していたカタログが、外の美術史の言説を取り込むことでカタログの美術書化が促進されたといっても、その美術史そのものが美術の歴史を分類、整理する一種のカタログ的思考の上に成立してきたのではないかという問題である。…(中略)美術カタログの誕生と発展自体が、美術作品の歴史化=美術史化を促進してきたものでもあったということだ。(p.318)

僕のやっている博物館・美術館の資料情報の研究というのは、こうしたカタログ類の末裔でもあるんですよね。それが美術史とどのような関係におかれていくのか、なんてことは、まだまだ全然見えてはきませんが…。もちろん、自分の仕事が美術史研究に何のインパクトももたらさなかったら、そんなの意味ないよな、とは思ってますけど。うーむ、まあそんなわけで、本当に示唆されるところの多い書物でした。

投稿者 ryoji : November 10, 2005 11:50 PM

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