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November 23, 2006

「揺らぐ近代 日本画と洋画のはざまに」 @ 東京国立近代美術館

「揺らぐ近代 日本画と洋画のはざまに」 @ 東京国立近代美術館を観てきました。祝日にしては全然混雑してなくて(淋しい)、とてもゆっくり観られてよかったです。

この展覧会は、明治以後「日本画」「洋画」というふうに絵画に2つのジャンルが制度として確立していった中でも、個々の画家たちの創作はそういう二分法にあっさり納まるはずもなく、様々に絵画そのものを模索していった、その様子を作品を通じて観ていこう、というものです。いわゆる近代絵画の名品だけを並べることでは見えてこなかった、画家たちの様々な試みや迷いや意気込みといったものが伝わってくる、とてもとても興味深い展覧会です。素晴しい。

自分的には「エッ!あの人がこんな絵を!?」みたいな驚きが沢山あって、そういう意味でとても楽しめました。ええ、ある程度近代の画家の名前と代表的な作品を知ってる人には、いろいろと驚きがあるんじゃないでしょうか(逆に、充分に詳しい人には良く知られているのかもしれませんが)。例えば、荒木寛畝というと、僕はこの「鶏」のような絵を思い浮かべるし、もちろん日本画の人と思ってたんですが、実は高橋由一、五姓田義松と並んで油絵三名家と称されたそうで、「狸」という油彩の作品が出てました(東博にあるのに全然知らなかった…)。とか、「白雲紅樹」のような作品で知られる日本画の橋本雅邦が、海軍時代に描いた油絵「水雷命中之図」とか。やはり日本画で知られる川端玉章の油彩の植物画とか。あるいは、代表作「収穫」で知られる油絵の浅井忠が、ほとんどマンガみたいな桃太郎の掛け軸(2幅のうち左に桃太郎と猿、犬、雉、右にうなだれる鬼たち)を描いていたりとか。小林古径の油彩とか。もう、そういうのが一杯で、すんごい面白かったですよ。

岸田劉生のみっちり描きこむ絵が速水御舟など日本画家たちに影響を与えてたというのも面白いです。劉生の絵だけでなく、それに影響を受けた他の画家たちの作品を並べて観ていくことで、劉生の存在感を改めて認識させられます。

そうそう、劉生といえば、今回「野童女」(このページの中ごろに画像があります)が出ていたのですが、劉生日記によると、これは顔輝の寒山拾得図のうちの寒山に着想したものなんだそうです。面白いなあ。あとそうそう、下村観山の「魚藍観音」という作品、観音の顔がモロにモナリザで、なんだかすごいですよ~。

最後のほうにあった川端龍子の「龍巻」も強烈なインパクトのある作品でした。僕はこの人のことよく知らなかったのですが、なんか「爆弾散華」とかが妙に記憶に残っていて、気になる画家ではあります。前に江戸博でやってたの観に行けばよかった…。一番最後は、僕も大好きな熊谷守一。日本画と油絵それぞれで描かれた「鯤」、最高です。

というわけで、非常に楽しめる内容でした。なんというか、展示を観ながら「あ、この人ってあの絵の人だっけ?」とか「この人の典型的な作品ってどんなだっけ?」とか「同じ画題でこんな絵があったはずだと思うんだけど、誰だっけ?」とか、自分の記憶力の弱さを痛感しながら観ましたよ。いや、つまり、そういうふうに観ながらクロス・リファレンスしたくなるような内容だったわけで、それがとても楽しいです。会場で観ながらいろいろ検索したくなってしまった…。いずれにせよ、近代日本美術に関心のある人ならきっと面白がれるであろう、大変充実した内容です。ゆっくり見すぎで常設が観られず。また今度行こうっと。

投稿者 ryoji : November 23, 2006 11:38 PM

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