やったもんがち芸術論
第2回

動き

絵とか彫刻を褒めるのに「今にも動きだしそうだ」って言い方がありますよね。 ま、今どきこんな褒め方しませんけどね。でもとにかく、動きを表現するのに 苦労した人はたくさんいます。なかには「あらゆるものが動き、走り、素早く 変化する…(略)…したがって疾走する馬の脚は4本ではなく20本であり…」とか 言って、馬の脚をいっぱい描いたりした画家もいるんですよ。 「じゃあ動かせばいいじゃん」とは思わなかったみたいですね。

ところで、図工の時間にモビールって作ったことありませんか? あれってカルダーという彫刻家が始めたものなんですよ。最初は人形とか だったんですけど、そのうち抽象的な形でやるようになったんです。 (小学校の図工では、実は前衛芸術を教えているのだ。) この人、歳とってからは『スタビル』とかって動かないのを作ってたんですが、 『モビール』ほどポピュラーにはならなかったみたいですね。

ともあれ、「まるで」じゃなくて実際に動く作品がいろいろ作られるように なったわけです。それぞれかわいい動きだったり、いじらしい動きだったり、 イカレたようなのや、迫力たっぷりのものも。一口に「動く」といっても、 いろんな表情があります。明和でいえば『ドスコイ』も『肺魚』も動くけど、 全然ちがう雰囲気を出してますよね。

今は動く作品なんて珍しくもないですけれど、100年くらい前にはそんなの 一つもなかったんだってこと、たまには思いだしてみるのも良いかも。 だって何千年もの間、止まった作品しかなかったんですから。

(1999/04/09)


Previous | Next | Index
闇雲 [Top]
Murata Ryoji - <ryoji@cc.rim.or.jp>