やったもんがち芸術論
第3回

くっつける

絵は、絵の具を塗りかさねて描きます。彫刻は、石を彫ったり粘土を盛ったりして 造ります。これは完成に向ってちょっとずつ材料の形を変えていくやり方ですね。 けどもっと大胆に、あるモノと別のモノを「くっつける」っていう方法だって あります。ものを作る方法には。

ピカソは油絵に新聞紙をくっつけたことがあります。油絵にくっついた新聞紙は 絵の一部ですから、もうただの新聞紙ではありません。でももちろん絵の具でも ないわけです。糊で貼りつけるだけで、何か新しいものが出来ちゃったんです。

基本的な発想は「くっつける」だけですから、これはかなり応用が効きます。 絵に材木をくっつけたり、切り抜いた写真どうしをくっつけたり。 何も平らなものじゃなくてもいいわけで、山羊の胴体にタイヤをくっつけた 人もいれば、ガラクタをかきあつめてきてくっつけた人もいます。

そうやって、もともとのモノとは違う何だか奇妙なものを、たくさんの アーティスト達が作りました。いろんなものをくっつけることで、 それまでになかった新しいものを作りだしたわけです。 完成に向ってくっつけていくのではなくて、くっつけることで結果的に 新しいものが出来ちゃう。これってすごい発想の転換ですよね。 もちろん、ただくっつければいいってもんじゃないんでしょうけど。

明和の製品だって、よく見るといろんなものを「くっつける」ことで出来て たりしますよね。木魚とウィング、弓とノコギリ、顔とピストル……等々。 まあ、糊の代わりに100vで何もかもくっつけてる、とも言えますけど。

(1999/06/01)


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Murata Ryoji - <ryoji@cc.rim.or.jp>