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June 21, 2006
博物館資料 RDF で統制語彙を使う
分類概念のようなカテゴリカルなデータを値域に持つしくみを調べていて、Representing Classes As Property Values on the Semantic Web を読んでみました。プロパティの値としてクラスを持つような表現のパターンを検討しているのですが、大変参考になりました。博物館資料の場合、カテゴリカルな情報として使いたいのはおそらくいわゆる分類 (絵画、彫刻、工芸、歴史資料…) や技法 (油彩、鍍金、蒔絵、エングレーヴィング…) や、そういったものです。このドキュメントをざっと見ると、approach 1 はシンプルでよさげ、approach 2 は「主題としてのライオン」と「生きたライオン」が混ざるのでイマイチ、approach 3 はオントロジーとシソーラスが2重になるのがイヤじゃなければかなりよさげ、approach 4 はあらかじめクラスをいっぱい作らなくちゃいけないので無理、approach 5 は推論が使えないのでイマイチ。というわで、approach 1 か approach 3 がいいんじゃないかな、と。
OWL DL にこだわるのがどれくらい重要なのかは今の僕にはよくわかりません。なのでむしろ、こういうカテゴリカルな情報を OWL クラス階層として (オントロジーとして) 作るのと、たとえば SKOS を使って用語の階層として (シソーラスとして) 作るのとでどちらのアプローチがこの領域で妥当か、というふうに問題を切りかえてみます。あれ? 切りかえてみたところでやっぱりよくわかりません…。しかし「絵画」とか「彫刻」とか「古文書」とかをオントロジー的に記述していくということを考えると正直メマイがします。とうぶんできそうにありません。それになんかその方向はすごく危険なニオイがする (これ重要)。それよりは、AAT のような実績もあることだし (SKOS Core の例でも使われてますね)、シソーラスのほうが現実的な気がします。「絵画とは何か? それは平面的な形態で人によって描かれたもので…」という哲学談義がしたいのじゃなくて、「絵画」で検索したら「絵巻」も「壁画」も引掛ってほしいだけなのだから。CIDOC CRM だってそういう意味のジャンルは全然無視してるじゃん。だからいいんだよきっと。
だから将来カテゴリカルな情報をある程度高い精度で使うことを考えるなら、SKOS Core なんかを使ってシソーラスを作る方向で考えるのがよろしいと思う。
投稿者 ryoji : 12:26 AM | トラックバック
June 20, 2006
?b とリテラシー
あいかわらず ?b は話題になってるページをチェックするだけで自分では使ってません。話題チェックには便利なんだけど。
で、なんか ?b の人気エントリーを見てると凹むことがよくあるんですが、それはこういう新しいサービスをガンガン使っているからといってリテラシー (というか、資料批判のセンス) が向上するわけじゃないってことをまざまざと見せつけられるから。あたりまえなんですけれどね…。すごくわかりやすく見えてしまうので…。どれが、とは書きませんが、どう見ても根拠の怪しい陰謀論やら煽り記事に大量のユーザが反応して「これはひどい」とかつけて、知らなかったとか読んでおくべきだとかコメントしてるのを見ると、もうちょっと「アヤシゲ」な話にハナが利かないとヤバくないですか? と思うわけです。まぁ、それだけ注目されると、たいてい批判的なコメントしてる人もいるので多少は安心するんですが。
投稿者 ryoji : 11:32 PM | トラックバック
June 18, 2006
博物館資料のRDF
ミュージアム資料情報構造化モデルが昨年11月に公開されて (今改訂作業も進行中)、これをもとにして RDF で博物館資料の情報を表現できるようにするっていうのを検討中なのです。で、ボキャブラリの定義とか考える中で、もちろん DublinCore とか、あと FRBR の RDF 表現なんかも参考にしてます。FRBR のやつなんかは他の語彙もうまく使いながらという感じのようですが、基本的には rdf と rdfs の語彙プラス独自の語彙で構成して、foaf や dc なんかとの関係はあとから owl を使って定義してやるという方向でどうかなと。(あ、このエントリは非公式な僕個人のメモです、念のため)
で。ミュージアム資料情報構造化モデルでは、簡単に書くための簡易記述と、詳しく書くための詳細要素が定義されてます。今現在動いてるデータベースなんかから無理なく共有できる形のものを取り出す、ということと、細かくデータを作れるならこういう要素があるといいよ、というのを組合せてるわけです。たとえば資料番号は番号だけでもいいんだけど、それがどういう番号なのかとか、いつ付けられた番号なのかとかも示せるわけです。それで、今考えてるのは、こういう場合に簡易記述では (以下デフォルトの名前空間がミュージアム資料用の語彙で、MuseumObject が対象になってるモノです)、
<MuseumObject> <hasObjectNumber> <ObjectNumber> <rdf:value>A-12345</rdf:value> </ObjectNumber> </hasObjectNumber> </MuseumObject>
一方、詳細記述では、
<MuseumObject> <hasObjectNumber> <ObjectNumber> <rdf:value>A-12345</rdf:value> <hasType>収蔵品番号</hasType> <hasDate>1970-12-03</hasDate> </ObjectNumber> </hasObjectNumber> </MuseumObject>
みたいにしてやれば、一貫した形にできるんじゃないかなと。それで「主たる値」には rdf:value を使うのがいいんじゃないかなーと思っているわけです。例えば資料のアイテム数を表す員数 (Quantity) の場合には、計算のための数値と人間が読むための文字列表現があるので、
<MuseumObject> <hasQuantity> <Quantity> <rdf:value>7</rdf:value> <rdfs:label>7巻</rdfs:label> </Quantity> </hasQuantity> </MuseumObject>
みたいにして rdf:value と rdfs:label を使ってやるのがいいかと。なんだけれども、ちょっとしたメモ - Dublin CoreのRDFモデル新仕様案で言及されてる Expressing Dublin Core metadata using the Resource Description Framework (RDF) とそれについてのノートを読むと、この DCMI の提案って以前提案されてた方式と結構変えてきてるんですね。それで、以前のドキュメントには rdf:value と rdfs:label を使う方法が書かれてたんですが、それを dcrdf:valueString で置きかえる、と。理由は、
The use of rdfs:label or rdf:value for expressing value strings is no longer supported, as their original definitions do not clearly fit this purpose.
ということらしいのですが…。うーん、そうなのか…。そうなのか? RDF-Schema のドキュメント読んでも別に外れてるわけではないようですが…。もっと明確である必要があるってことなのかな。むー。
あともうひとつ迷ってる点。技法とか形状とか分類とかってのには、いつの日かシソーラスが使えるようになることを夢見てるんです。今は日本にはないけど。そいでですね、たとえば分類 (Classification) を考えると、今はシソーラスとか無いので
<MuseumObject> <hasClassification> <Classification> <rdf:value>絵画</rdf:value> </Classification> </hasClassification> </MuseumObject>
みたいに書くのかなと。分類クラス (ややこしい。これのインスタンスは一つの分類概念ってことです) の匿名リソースがあって、その値が「絵画」と。で、特定のシソーラスを使う場合、その名前空間が exterms とすると
<MuseumObject> <hasClassfication> <exterm:Painting> <rdfs:label>絵画</rdfs:label> </exterm:Painting> </hasClassification> </MuseumObject>
みたいにして、読むためには rdfs:label をつけるようになるんじゃないかという気がするわけです。そうすっと、さっきのシソーラスなしだと rdf:value で、ありだと rdfs:label っていうなんか変なことに。こういう場合って、最初のシソーラスなしの例がおかしくて、あっちでも rdfs:label に「絵画」とか書いといたほうがいい、と考えるべきなんすかね? Classification クラスのインスタンスは分類概念なんだから、それにラベルをつけるって考えるのが正しい? これが正しいような気がしてるんですが、どうなんだろう。むー。
あとあと、この hasClassification の range をどうするか。ヨソで定義された分類用語を使えるようにしておくには Classification を range にするんじゃなく rdfs:Resource を range にする必要がある、のか? (う、イマイチはっきり理解してないのが露呈した)
投稿者 ryoji : 06:12 PM | トラックバック
June 11, 2006
北欧のスタイリッシュ・デザイン @ 東京都庭園美術館
「ディナーセットを粉砕せよ!」というわけで(違)、『北欧のスタイリッシュ・デザイン―フィンランドのアラビア窯』 @ 東京都庭園美術館を観てきました。滋賀県立陶芸の森で昨年3月に始まった巡回展の東京展、ってことでいいのかな。タイトルの通り、フィンランドの代表的な窯である Arabia のデザインを紹介する展覧会です。雨のわりに人も入っていて、さすがに北欧デザインは人気なのだなぁと。Arabia は Kaj Frank の Kilta を元にした Teema シリーズなんかが我が家でもだいぶ重宝してます。
1873年創業だそうで、そんなにすごい古いわけでもないんですね。初期のものは中国風の陶器とか、わりにもっさりしてるんですが、アールデコあたりから急に洗練されてくるんですね。面白い。全体としてはやっぱり、意外ともっさり、というか華麗さや繊細さよりも、暖かみがあって親しみやすいって感じですよね。かわいい。
Paratiisi シリーズの Birger Kaipiainen や、Raija Uosikkinen の絵付けは、とてもいいですね。デザイナーの名前を知らなかったし、あまり意識していなかったのですが、僕はこの2人の作品はすごく好きです。でも、もちろん Arabia と言えば Kaj Franck。こうして並べてみると、上の世代の Kurt Ekholm のデザインも機能主義的で綺麗なんですが、Kaj Franck のはやはりずば抜けて洗練されてますね。くー。あとやっぱり、機能的で廉価なものっていう近代デザインの理念をきちっと実現してて、ウチみたいな庶民の生活も豊かにしてくれちゃうところが何といっても Arabia の素晴しいところですよね。
現代の作家では、Heljä Liukko-Sundström の「言葉のないお話」からのウォールプレートが気に入りました。可愛いくてオソロシイ。ウサギを擬人化した寓意的な絵柄で、なんとなく Goya の Caprichos を連想してしまいました。
というわけで楽しめたのですが、うーん、そこもうちょっとkwsk! ってところが結構あって、もうちょっと突込んでてくれたらよかったのになー。同時代の陶芸の状況とか、他の北欧デザインの流れとの関係とか…。ちょっぴり物足りない気持ちが残ってしまいました (最近は庭園美術館での展覧会には無闇に期待してしまうのです…)。あ、そうそうムーミンものもちゃんと出てます。3階に展示されてた個人蔵のコレクションなんかは、指を咥えて「ほしー」となってる人がかなりいると思われます。
投稿者 ryoji : 11:28 PM | トラックバック
June 08, 2006
池田亮司 "C4I + datamatics [prototype]" @ 東京国際フォーラム
池田亮司のコンサート "C4I + datamatics [prototype]" @ 東京国際フォーラムに昨日行ってきました。コンサート、というか実質はビデオ・ショーなのでしたが。なんかああいうかしこまった感じのホールでっていうのは何となく違和感があるような。ともあれ、うーん、自分にはピンとこなかったです…。もっとこう、カラダに来るものを期待してたせいでしょうか。
投稿者 ryoji : 10:16 PM | トラックバック
June 06, 2006
シンポジウム終了
第17回アート・ドキュメンテーション学会年次大会 @ 九州国立博物館が無事終了。シンポジウム、研究会、見学会とも充実していました。2日間のプログラムの後、さらにオプショナル・ツアーとして長崎歴史文化博物館と長崎県美術館の見学でも、バックヤードや書庫・書架を見せていただき、丁寧に案内していただきました。
シンポジウムとか懇親会とかで話したり考えたりいろいろ。
- 博物館の情報共有が韓国と比べて10年遅れてるという話は、そうなのかもしれないけど、自分にはあまり興味がない。
- 学芸員の意識が低いからうまくいかない、という話はもうやめたほうがいい。そう言うことで何かが変わる気がしない。
- ↑はシステム作っても学芸員がデータ入れてくれないって愚痴なんだけど、それはシステムの作りに工夫が足りないから、と考えたほうが前向きで健全。
- 目録化が進んでいないのは事実なので、それはとっても恥ずべき状態で、社会的責任を果たしてない、という主張はもっとしていい。
- 文化庁にばかり期待するのは僕もどうかと思う。自分たちでできることをとりあえず。
- システム開発にあたっては、そうとう車輪の再発明が行われてる様子。これはよくない。
- だからオントロジーとか RDF とかを学芸員が理解する必要なんか、ぜんっっぜん無いんだってばー。
- 文化遺産オンラインは素人のためのもの。美術館の現場では使えない、とおっしゃる人は、まず自前のデータをしっかり作りましょう。みんながそうしてくれれば、使えるものができるはずだから。
- 政府の文化政策が悪い、と本気で思ってる人には、是非ロビー活動してほしい。学会なんかで言っててもとどかないと思う。さもなくば、もっと目立つ学会にしないと。
ともあれ、自分で言うのもなんですが、かなり充実した内容だったと思います。実行委員長なんて始めてだったので不手際がいろいろあり、フォローしてもらいまくりでしたが、なんとか無事終了してホッとしてます。あーもう疲れた。