MOTアニュアル 2000『低温火傷』

第2回になる MOTアニュアル。 去年観た『ひそやかなラディカリズム』が 面白かったので、ちょっと期待して観にいった。 今年も去年同様、もうすこし早くやってもよかったんじゃないかと思える 内容だったわけだが、まあ企画に時間のかかる美術館だから しょうがないのかもしれない。 また、すでに観たことのある作品を出していた ホンマタカシ (レヴュー) や 中村 政人 (レヴュー) については、やはり新作が観たかったところ。

そんな中で 平川 典俊 の写真を観るのは今回が初めてだった。 地面を真上から撮影した "S" シリーズの写真は単に構成的に 見えるけれども、実は自殺現場を撮ったものだという。 そう聞くと一転してゾッとする風景に見えてくるから不思議。 また、"The Greatest" と題されたシリーズは、印刷物からとられた ポートレイトに名前が付されたもの。しっかり名前がついていても匿名的にしか 見えない皮肉なポートレイトだ。また、モデルが美術系の学生だということには、 美術を学ぶことが個性的な表現を学ぶことだという考えに対する皮肉も あるのかもしれない。

蛇口から垂れるような形の人形が、足元や服を(蛇口からの水で?)汚したまま 並んでいる甚だ不愉快なインスタレーションは、木村 太陽 の「ルーチン」だ。 不愉快なのは「わ、きたねぇ」と思わずにいられないだけでなく、 糞便で汚れた服のまま路上を彷う知的障害者をも思いださせるからだ。 けれども、無様で汚ならしい体は僕達のものでもある。 ビデオ作品 "Video as Drawing" では、その不格好さや 居心地の悪さがユーモラスに表現されていて、楽しめる。

「低温火傷」という時代診断が適切かどうかは別にして、楽しめる内容だった。 来年にも期待したい。


Review 2000[Index]
Murata Ryoji - <ryoji@cc.rim.or.jp>
$Date: 2000/1/31$