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November 28, 2005

関秀夫『博物館の誕生―町田久成と東京帝室博物館』

職場を知ろう! ということで、関秀夫『博物館の誕生―町田久成と東京帝室博物館』(岩波新書953, 2005) を読んでます。

博物館の誕生―町田久成と東京帝室博物館

日本の博物館の父、町田久成がいかにして博物館を創設したかが丁寧に追ってあって、とても勉強になります。薩摩の出身だったんですね。ということは、今の上野公園になる前の寛永寺が戊辰戦争で焼け野原になったこととか、博物館の開館に向けて動いてた時期に西南戦争があったこととか、いろいろな思いを持ってみてたんじゃないかなーと。あと若い時にイギリスに行ってて、そこで大英博物館にいたく感動したんだそうで、それにインスパイアされて博物館をつくろうと考えたんだそうで。そうかー大英博物館かー。

町田久成の伝記としても面白い読み物だと思います。外務省から外されたこととか、壬申検査とか、上野動物園の創設者田中芳男との因縁とか、大久保利通のバックアップとか、文部省やら内務省やら農商務省やら各種省庁の利害・思惑のうずまく様などなど…。うーん、これ年末年始のドラマスペシャルとかでやったら、結構面白いのができそう。いやほんと。時代も幕末から明治初期だし、ウケるんじゃないかなぁ。

投稿者 ryoji : 01:20 AM | トラックバック

November 24, 2005

チュニジアの言論統制に対する IFLA の抗議

少し前になりますが、今月18日付で、IFLA(国際図書館連盟)が "IFLA protests crack down of intellectual freedom in Tunisia" という声明を出していますね。ちょうど世界情報社会サミット (WSIS) の最終日です。今回の WSIS はチュニジアで行われていたわけですが、その開催国では表現の自由と情報への自由なアクセスが制限されているという…。IFLA の情報へのアクセスと表現の自由に関する委員会 (FAIFE) が9月23日に "IFLA/FAIFE Report on IFEX-TMG Mission to Tunis" というレポートを出しています。まだちゃんと読んでないですが、カレントアウェアネス-E 第68号によると、

他方で,チュニジアでは,納本された出版物について内務省が承認しなければ流通させることができない。レポートによれば,これが事実上の検閲制度となっており,年間1,400冊程しか新刊書は出版されておらず,それも子ども向けか復刻版が多く,大人向けの本は200~300冊程度であるという。

ふむー。全然知りませんでしたよ…。しかし IFLA のような図書館のアソシエーションがこういう声明を出すというのは、すごいよなーと素直に関心してしまいます。

投稿者 ryoji : 11:08 PM | トラックバック

November 23, 2005

珍ドイツ紀行

Michaela Vieser. Reto Wettach., "Übersehene Sehenswürdigkeiten. Deutsche Orte. (Overlooked Sights. German Places.)," (ic! berlin, 2004, ISBN3980975800) という本をお土産に頂きました。かなーり変な本で、楽しいです。英語でも書かれるのでドイツ語わからなくても読めるし。ふと見ると Preface を都築響一が書いてて、うわあっ! ってなりました。

投稿者 ryoji : 11:12 PM | トラックバック

Futura

Futuraという書体があって、これが「ナチスを連想させるので嫌われている」という話があるらしいのですが、

その調査の結果は、詳しくはデザインの現場2004年10月号を参照して欲しいが、簡単に言うと「Futuraがナチスと結びつきがあると感じる者はおらず、また特定の国家あるいは民族に嫌われている事実もない」というものであった。
Futura(フーツラ)とナチス - FM STUDIO Scribbles

という記事を見つけました。Futura が嫌われてるという話は僕もどこかで読んだことがあって、ドイツに留学経験のあるに「そうなの?」と聞いたら、「いや、そんなの聞いたことない。ていうか皆使ってたよ Futura は」という答が。どうも釈然としないものがあって、ふと思い出して検索してみたたら上の記事が。ちょっとスッキリ。でも「デザインの現場」の記事も読みたいです。

投稿者 ryoji : 11:02 PM | コメント (4) | トラックバック

November 20, 2005

9年前の「来たるべきミュージアムに向けて」

InterCommunication No.15 (1996 Winter) に、「来たるべきミュージアムに向けて」という記事が載っていて、なんとなく雑誌を整理してるときに読んでしまいました。高階秀爾、浅田彰、伊藤俊治、彦坂裕の4人のトークです。とりわけ高階秀爾の発言が、なんかすげー正しいなーと(←偉そう)。

美術館で作品のデータを集める際の問題について、

美術館に限って話をすると、美術作品というのは非常に数多くあり、その作品一点一点についていろいろな情報があるわけです。作品の大きさ、材料という物理的な情報もあるし、いつどこででき、どう作品が移動したかという歴史的な情報もある。それはほとんど戸籍に匹敵すると思っているんです。(中略)そうすると、、例えばピカソ一人に対して、人口6、7万の都市の戸籍係と同じくらいの情報が要るわけです。(pp60-61)

またルーヴルなどでは、作品の情報の非常にこまごましたデータを、最初は手書きで、それからタイプライター、コピーとそれぞれの時代の方法で、とにかく蓄積してきてて、それを電子化している、と。

そういう蓄積がずっとあり、それを電子化しようという問題になってきた。日本は機械の方が先行していて ――それはそれでもちろんけっこうなんですが ―― 集める方、蓄積の方を忘れては具合が悪いですね。(p63)

というわけで、そういう作業をする体制なり人手 (registrar) が必要だという話はこの時点でもちゃんと出てるんですね。ということは、この頃と比べて全然状況は改善してないってことか…。そんな風に体系的に情報を蓄積してるところというのはなかなか…。どちらかというと「展覧会に出す」とか「あるコレクションを調査する」という、特定のモノについて集中的に調べあげるというきっかけがあって、その時にあちこちから情報をかきあつめてるというケースがほとんどではないでしょうか。継続的に日頃から蓄積している情報もあるとは思いますが、体系的に、そういう体制までととのえて、というところまでいってないんじゃないですかねー。

あとあと、専門的な情報を蓄積して、専門家向けに公開するというのが役所的な発想とかみあわせが悪いというようなことも言ってますね。役所というのは、集めたものは誰にでもアクセスできるようにするというのが基本だと。でもそうすると、非常に専門的な資料を集めて専門家だけにはちゃんと見せる、だけど中学生には見せない、というようなことがやりにくい、と。ま、実際彼が館長をやってた西洋美術館のライブラリーというのは、登録利用者が事前に予約して使うというスタイルになっているわけですが。

しかしここら辺は僕もちょっと思うところがあって、やはり専門家がちゃんと使えるデータをまともに蓄積するのがどう考えても最初だろうと思うんです。子ども向けとか教育プログラム用とかというのは、そこからの応用でしょうと。なんだけど、なんかデジタルなんとかとか言いだすと(偏見)、子どもやお年寄りでもわかりやすいコンテンツを作りましょうとかいって、最初の段階で編集しちゃう。編集を前提にデータを作るから、使いまわしができない。こういうふうに、とにかく出すものは必ず編集した後のもの、プレゼンテーションがつくられてるものでなければ、という風習(?)は、なかなか根が深いもののように思います。

おっしゃるように、ルーヴルがデリダなどに頼んでやっていることは、とにかくモノがありますから適当にやってくださいということ、これはエディトリアルの問題だと思うんです。エディットすること、つまりエディターに依頼することで、新しい見方が出てくるのではという試みですね。僕は美術館のひとつの役割はそれでいいと思うんです。そのためには、材料が全部揃ってなきゃいけない。(p65)

展覧会はエディットされたものなわけです。つまりあるオーダーを与えるということが行なわれていて、それが美術館の役割としてもちろん重要なんだけど、そうしないで、つまり生データを出すということにあまり価値が置かれないんですね。だから目録も作られない。このあたり、まあ博物館より博覧会が先にだったしねーとか、そういう歴史的経緯が尾を引いてるのかどうかはわかりませんが…。

ともかくまあ、素のデータを出したら誰かがエディットするかも、そこから何か出るかも、というのは、今の時点では相当現実味のある話だと思うんですよ。ほら、それこそ Web2.0 とか近ごろ言ってる話の中の、「User Add Value」とか「Some Rights Reserved」とか「Design for Participation」とかと同じで、やっぱり「ユーザは賢い」という前提で作るということも必要なはずだと思うのです。だってデータの使い方は、別の人が考えたって構わないわけですから。

とか、9年も前の雑誌記事なのに、やけにいろいろ考えさせられました。はい。

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November 18, 2005

日本美術情報センター

日本美術情報センターという NPO が設立されたそうですNPO設立に向けた準備室ができたそうです。(※12/6 訂正)

美術分野において、これまで一番おろそかにされてきた「美術情報の共有化・ネットワーク化」を推進するとともに、その担い手である「文献資料に精通した実務者」を育成するために、NPO法人日本美術情報センター設立準備室が、2005年9月、美術情報編纂に深く関係する人たちによって創設されました。

たのもしい。期待。

投稿者 ryoji : 01:03 AM | コメント (4) | トラックバック

November 12, 2005

『宮殿とモスクの至宝 ― V&A 美術館所蔵イスラム美術展』 @ 世田谷美術館

あまり見てないものを見てみよう、ということで、『宮殿とモスクの至宝 ― V&A 美術館所蔵イスラム美術展』 @ 世田谷美術館を観てきました。Victoria & Albert Museumイスラム美術ギャラリーが改装され、2006年夏に「ジャミール・ギャラリー」としてオープンするのにあわせた国際巡回展です。

偶像崇拝がタブーのイスラム圏の美術って、絵画や彫刻よりも工芸がとても発展してるんですよね。今回の展覧会も、陶磁器、金工や染織を中心にしたものでした。あ、そうそう、あとガラスね。観てて特に興味を引かれたのは、まず「聖なる言葉:文字の意匠」と題された展示室。クルアーンからの引用や、パトロンを称えた言葉、所有者のための吉祥の言葉などが、様々な工芸品にデザインとして組みこまれていたのが大変面白かったです。クルアーンの写本のタイポグラフィも面白いし(あー、これ読めたらなぁ…)、タイルや瓶、剣などに、色々な形で使われているんですよね。アラビア文字独特の文様的な形態が、草花文などに馴染むようにして一体になってるという感じで。

それから、こないだ『華麗なる伊万里、雅の京焼』を観たせいというのもあると思いますが、陶磁器もおもしろい。中国磁器のあの大人気ない透明感のある白がほしくて、「フリットウェア」と呼ばれる技法が産まれて、白い陶器に色をのせて似せて作ったりしたんですね。中国の磁器ってホントに世界中で真似されてきたんですねー。あとイスラムの陶器といえば、あの特徴的なラスター彩。虹色にキラキラとしていて目を楽しませてくれます。

図像表現と宗教との関係についても、まったく図像表現が使われなかったわけではなくて、宗教施設とは関係のない日用品では結構使われてたことなどもわかりました。あと王朝ごとに様式が対立するように変わっていくというのも興味深いですね。モノとしていいなーと思ったのは、タイル製の天板がついたテーブル。タイルもターコイズブルーとアクセントに赤で綺麗だし、脚は黒檀に象嵌の凝ったつくりで、ちょっぴり螺鈿もついてるというもの。それとそれと、金工では瓶とかが結構出てたんですけど、法隆寺伝来の竜首水瓶とか思いだしてしまいました。そういやガラス器とかもあっちのほうから来たものが伝わってるんですよねー…。

てなわけで、楽しめました。カタログは V&A で作られたものを翻訳したものですが、日本の展覧会カタログとちょっと趣きが違って、全体を通した解説になっていた、読み物として読んでもかなり勉強になりそうです。

投稿者 ryoji : 10:04 PM | トラックバック

公開研究会終了

「博物館情報処理に関する調査研究プロジェクト 公開研究会」というのを本日やりまして、無事終了しました。50人ほどの参加者で、やや会場が狭くなってしまい申し訳なかったです。が、関心を持っていただける方々の前でお話しさせてもらう機会というのは貴重ですね。自分のプレゼンも、まあそれなりにわかりやすくできたかな、という感触で、ホッとしてます。

ちなみに12月16日(金)にはじんもんこん2005 @ 東大でも発表する予定です。

投稿者 ryoji : 12:14 AM | トラックバック

November 10, 2005

島本浣『美術カタログ論』読了

少し前に買った、島本浣『美術カタログ論―記録・記憶・言説』 (三元社、2005年、ISBN4-88303-160-8) を読了しました。面白かったー。競売カタログ、展覧会カタログ、美術館カタログ、カタログ・レゾネのそれぞれについて、歴史的な背景とともに概観できる前半もとても勉強になりましたし、カタログと美術史、カタログとタイトルといったテーマによる後半も、非常に興味深く読みました。

読み始めたときには、どちらかというとカタログに表されたディスクリプションの変遷みたいなものがわかるといいな、というつもりだったのですが、そしてその期待は充分満たされたのですが、それ以上に、美術史の中におけるカタログという場のもつ問題の広がりに、目からウロコの落ちる思いでした。特に、初期には展示空間の表象という側面の強かったカタログが、分類や年代史的配列によって現実の空間から離れていき、さらに美術史の言説を支えるデータベースとしてのインデックス的空間へと変容していく、という見取り図には、考えさせられました。

そもそも分類と記述の形式の内に美術史を表象していたカタログが、外の美術史の言説を取り込むことでカタログの美術書化が促進されたといっても、その美術史そのものが美術の歴史を分類、整理する一種のカタログ的思考の上に成立してきたのではないかという問題である。…(中略)美術カタログの誕生と発展自体が、美術作品の歴史化=美術史化を促進してきたものでもあったということだ。(p.318)

僕のやっている博物館・美術館の資料情報の研究というのは、こうしたカタログ類の末裔でもあるんですよね。それが美術史とどのような関係におかれていくのか、なんてことは、まだまだ全然見えてはきませんが…。もちろん、自分の仕事が美術史研究に何のインパクトももたらさなかったら、そんなの意味ないよな、とは思ってますけど。うーむ、まあそんなわけで、本当に示唆されるところの多い書物でした。

投稿者 ryoji : 11:50 PM | トラックバック

November 05, 2005

ヒマ潰し2つ

ヒマなはずないんですけど(汗;)、ヒマ潰しというか、見てるうちに妙に時間がたってしまったもの。

Wikipedia保護されたページで編集合戦の実際を読みふけってしまった (すごい不毛なことしてるなぁ、俺…)。いやもうなんというか、本当に下らないことで編集合戦になるんですね。常識があれば納得するよねってことを、すごい偏執的に何度も書きこむ人っているんだなあ。Wikipedia は、だいぶ前に「よくある批判への回答」の一部を訳したり、ちょこちょこっと記事を書いたりして以来、じっくり読むということがなかったのですが、妙なところでハマりましたよ。それにしてもすごい成長ぶりですよねぇ。

もう一つは、はてなアンテナで自分のページのおとなりページを見るというもの。ここに関心を持ってくれてる人が、他にどんなの読んでるのかなーと。はてな使ってる人は普通にチェックしてたりするんでしょうか。結構面白いです。

投稿者 ryoji : 11:35 PM | トラックバック

図譜萌え

特別展「ジョン・グールドの鳥類図譜」 @ 玉川大学教育博物館は清子内親王出版記念とのことらしいですが、よさげな図譜。19世紀のリトグラフかぁ。しかしは…ちょっと手が出ませんね。

via Beltorchicca

投稿者 ryoji : 12:22 AM | トラックバック

November 03, 2005

ICC、続報ないの?

前に話題にした、ICCが閉館するかもしれないという話ですが、その後どうなったんでしょうねぇ。存続のための署名を集めていたようですが、集った署名はその後どうなったんだろう…。僕は結局署名というか協力しなかったんですけどね(メールも直接きたわけじゃないし、ウラがとれないなーと思ってるうちに、そのままにしてしまいました)。東京新聞の記事が8/15で、それより後の情報が見つかりません。公式サイトにも、依然として何もなし。ただ、開催中の展覧会より後のスケジュールが載ってないことがわかるだけです (今の時点で予定が決まってないなら、1月からの展覧会なんて出来るわけないけど)。プレスリリースだって展覧会の広報があるだけ。ICC Forever! というブログができてましたが、直接 ICC と関わりがあるわけではなさそうです。

ART iT の記事の後、ひょっとして雑誌記事とか、紙メディアには何か出てたのかしらん…。でももしそうなら、それで Web に何もないってのは、そりゃひどすぎだよ、と思います。噂ばっかり流れてる。それに本当に「まだ決まってない」なら、閉館の時期と言われてる2006年3月というのは近すぎですよね。もう半年もないのに、まだ公式な発表がないわけだから。コレクションやアーカイブの処理はちゃんとできるんでしょうか。活動を総括したドキュメントは出せるんでしょうか。2001年3月に『ICC documents 1997-2000』が出たきりなので、なくなる前にこれの続きは出してほしいなぁ。

でもまさか、このまま何も言わず黙って消えるってのはないよね? 今の展覧会が終わる12/25日までには何かあるんでしょ? 緊急シンポジウムとかなんかそういうの。 予定されてるトークイヴェントだけやって終わるつもりなんてこと、まさかまさか、ねー? 閉館の話をちゃんとどこかするはずだよね? ね?

投稿者 ryoji : 09:18 PM | トラックバック