November 05, 2009
展覧会チェッカ
ごぶさたしてます。こんなものを去年の今ごろに作って、ぼちぼち使っています。
EXHY
http://exhyby.appspot.com/
ヘルプ:
http://exhyby.appspot.com/help/index/
展覧会のデータを入れてチェックしとくと、個人用の日程表とか地図とか見れるというツールです。でもその辺の画面は、今の状態だとログインしないと見られないですね…。Googleアカウントで登録できます。
興味のある方は使ってみてください。詳しくはまた近いうちに。
投稿者 ryoji : 12:06 AM | コメント (2) | トラックバック
April 07, 2007
カナダ・ナショナル・ギャラリーの展覧会カタログ索引
IFLA Art Libraries Section の ML 経由。
Philip Dombowsky, "Index to National Gallery of Canada Exhibition Catalogues and Checklists 1880-1930" (National Gallery of Canada, March 2007) という本が出版されたそうです。カナダ・ナショナル・ギャラリーの1880年から1930年までの展覧会カタログ、および出版されていないチェックリストから作成されたインデックスで、カタログのリスト、作家のリスト、コレクターのリストの3部構成で、著者による論文もついているそうです。すばらしい。
日本だと東京文化財研究所がこういう仕事をしています。『明治期展覧会出品目録』とかね。一般の人の目に触れることはあまりないでしょうが、研究者にとっては大変重要なものでしょう。地味だし大変な仕事ですが、こういう作業が美術史研究を支えているんですよね。大事大事。
でも、たとえば「評論やりたい」という若者に比べて、こういうのやろうって人があまりいないのは、あんまりファッショナブルじゃない仕事なのでしょうがないんでしょうかね…。
投稿者 ryoji : 11:09 PM | トラックバック
March 14, 2007
Stuart で知られる Saatchi Gallery に中国語版
今朝たまたま読んだ記事に出ていたのですが、
Charles Saatchi draws Chinese artists to his gallery's retooled Web site - International Herald Tribune
ロンドンの Staachi Gallery の Web サイトに 中国語版ができてるんだそうです。このギャラリー、学生アーティストのための SNS 的サービス Stuart が結構注目されてますが、中国人の学生からの需要に気づいて、彼らが使いやすいようにということですね。でもなんか今見た様子では、トップページだけ中国語版が用意されているような感じでしたけど。
現代美術マーケットが今加熱気味とか聞きますが(よく知らないけど)、中国のアーティストも注目されてるらしいですねぇ。それにしてもなんというか、フットワークが軽いですね、Saatchi Gallery も、Stuart に登録してる中国人学生も。
投稿者 ryoji : 09:45 AM | トラックバック
March 10, 2007
第32回ディジタル図書館ワークショップ
第32回ディジタル図書館ワークショップに参加してきました。筑波大って今は秋葉原キャンパスがあるんですねー。素敵。ビバ!つくばエクスプレス。
神崎正英さんの大変役に立つレクチャーにつづいての、パネルディスカッションに参加させて頂きました。「メタデータの相互運用は本当に可能か?」という。国立国会図書館の中井万知子さん、国文学研究資料館の五島敏芳さん、コーディネータに筑波大学の宇陀則彦さんに神崎さんも交じえてのディスカッションでした。
僕は何につけ「不完全でも実際やってみるのが大事」と考える人なので、一番メタデータの活用が遅れてる博物館の人のくせにヘラヘラと楽観的な意見をお話ししてきました。図書館や文書館のデータと博物館のデータが一緒に検索したりマッシュアップできたりすれば、かなりいろいろ面白いことができるはず。まぁ、その前に自分たちの持ってるデータを早く世の中で使ってもらえるようにしなくちゃいけないのですが。
あとメタデータ云々という話だと、どうしてもどういうボキャブラリを定義するかとか、どういうモデルを作るかという話に集中してしまいがちなのですが、ちょっと前から、僕はそういう属性情報的なものの整備以前に、とにかく対象となるモノのアイデンティティをきっちり確立することが大事だということが(ようやく)わかってきたので、そういうことも少し話題にしてきました。まず、グローバルに使える ID を振って、それにアクセスできるようにすること。それができてはじめて、じゃあどういう属性を共通で持ちましょうかという話に意味が出てくるわけで。図書館の ISBN や全国書誌番号のようなものが博物館には何もないので、まずそこをなんとかしないといけない。もちろん今からであれば、URI として使えるものを考えるってのが現実的でしょうね。神崎さんも Amazon の asin の例を引き合いにしてそんな事もおっしゃってました。
投稿者 ryoji : 12:59 AM | トラックバック
November 25, 2006
RDF が良いと思うわけ
アカデミックな世界の情報資源共有っていうと、OAI-PMH がたぶん主流なんでしょうけれど、どうもこれにイマイチ乗り気になれないのです。というのは、OAI-PMH は XML でメタデータを集めるわけですが、XML-Schema を必須にしてるんですね、バリデーションのために。それで、なんというか、RDF と噛み合せが悪い。RDF でも、短縮構文は絶対使わないとか、要素の出現順序をすべて決めておくとかすれば XML-Schema に(無理矢理)合うような XML にできるんでしょうけど、なんだかそれはそれで無駄というかしょうもないというか…。「メタデータ」ハーベスティングなのに RDF を扱うちゃんとした方法が無いってそれどういうことよ、みたいな。
で、僕が美術情報の世界ではできれば RDF がいいなー、と思ってるのですが、いろいろ考えながら、最近は、このドメインに関わる様々な実体(Entity)、つまりモノ、人、場所、主題、分類、技法…そういうもののアイデンティティをトレースできることこそが必要だと感じてるからなんじゃないかな、と自分で思うようになりました。ただデータとして何か文字列がとれればいいっていうんじゃなくて、それぞれの対象となる Entity が識別・同定できて、それらの間の関係を表現してやることで、知的な活用ができる。だから対象のアイデンティティが一番大事なんじゃないかと。つまりそれは、URI ということになるんですが。RDF は、とにもかくにも URI というアイデンティティのための枠組みを全面的に活用してるわけで。
なんかね、語彙とか構文も大事だけど、一番重要なのは対象のアイデンティティだ、ってハッキリ思うようになったのです。
投稿者 ryoji : 01:09 AM | トラックバック
July 29, 2006
現実のモノとセマンティック・ウェブ - 博物館資料の RDF
あいさつだけと言った舌の根も乾かぬうちにアレですが、ちょっとしたメモ - RDFとは何かに、
RDFはメタデータだけを扱うのではなくて、むしろ知識や世の中に存在するものごととその関係を記述するというのは、重要なポイントだ。
そう、それですよそれ! 実際に存在するものを、非中央集中的に…それは今の美術情報の目標にぴったりなのです。というわけで、東京国立博物館ではミュージアム資料情報 RDF ボキャブラリとミュージアム資料情報構造化モデルの RDF 表現を検討しておるのです。まだ最初の案の段階で、先日の研究会で早速いくつかご指摘というか突っ込みがあったので (rdfs:label をそういう風に使うのはどうなのか? とか)、まだまだこれから洗練する必要があるですが。
でもでも、博物館資料を RDF で出せれば、
元々は異なる目的のために異なる人々によって記述された知識・情報であっても、組み合わせて再利用することができるのだ。
博物館以外のコミュニティというか知識空間でも、すごい使いでがあるはずなんです! エキサイティングじゃないですか? だからセマンティック・ウェブなんて夢見すぎとか言わないでください(笑)。
投稿者 ryoji : 12:00 AM | トラックバック
June 18, 2006
博物館資料のRDF
ミュージアム資料情報構造化モデルが昨年11月に公開されて (今改訂作業も進行中)、これをもとにして RDF で博物館資料の情報を表現できるようにするっていうのを検討中なのです。で、ボキャブラリの定義とか考える中で、もちろん DublinCore とか、あと FRBR の RDF 表現なんかも参考にしてます。FRBR のやつなんかは他の語彙もうまく使いながらという感じのようですが、基本的には rdf と rdfs の語彙プラス独自の語彙で構成して、foaf や dc なんかとの関係はあとから owl を使って定義してやるという方向でどうかなと。(あ、このエントリは非公式な僕個人のメモです、念のため)
で。ミュージアム資料情報構造化モデルでは、簡単に書くための簡易記述と、詳しく書くための詳細要素が定義されてます。今現在動いてるデータベースなんかから無理なく共有できる形のものを取り出す、ということと、細かくデータを作れるならこういう要素があるといいよ、というのを組合せてるわけです。たとえば資料番号は番号だけでもいいんだけど、それがどういう番号なのかとか、いつ付けられた番号なのかとかも示せるわけです。それで、今考えてるのは、こういう場合に簡易記述では (以下デフォルトの名前空間がミュージアム資料用の語彙で、MuseumObject が対象になってるモノです)、
<MuseumObject> <hasObjectNumber> <ObjectNumber> <rdf:value>A-12345</rdf:value> </ObjectNumber> </hasObjectNumber> </MuseumObject>
一方、詳細記述では、
<MuseumObject> <hasObjectNumber> <ObjectNumber> <rdf:value>A-12345</rdf:value> <hasType>収蔵品番号</hasType> <hasDate>1970-12-03</hasDate> </ObjectNumber> </hasObjectNumber> </MuseumObject>
みたいにしてやれば、一貫した形にできるんじゃないかなと。それで「主たる値」には rdf:value を使うのがいいんじゃないかなーと思っているわけです。例えば資料のアイテム数を表す員数 (Quantity) の場合には、計算のための数値と人間が読むための文字列表現があるので、
<MuseumObject> <hasQuantity> <Quantity> <rdf:value>7</rdf:value> <rdfs:label>7巻</rdfs:label> </Quantity> </hasQuantity> </MuseumObject>
みたいにして rdf:value と rdfs:label を使ってやるのがいいかと。なんだけれども、ちょっとしたメモ - Dublin CoreのRDFモデル新仕様案で言及されてる Expressing Dublin Core metadata using the Resource Description Framework (RDF) とそれについてのノートを読むと、この DCMI の提案って以前提案されてた方式と結構変えてきてるんですね。それで、以前のドキュメントには rdf:value と rdfs:label を使う方法が書かれてたんですが、それを dcrdf:valueString で置きかえる、と。理由は、
The use of rdfs:label or rdf:value for expressing value strings is no longer supported, as their original definitions do not clearly fit this purpose.
ということらしいのですが…。うーん、そうなのか…。そうなのか? RDF-Schema のドキュメント読んでも別に外れてるわけではないようですが…。もっと明確である必要があるってことなのかな。むー。
あともうひとつ迷ってる点。技法とか形状とか分類とかってのには、いつの日かシソーラスが使えるようになることを夢見てるんです。今は日本にはないけど。そいでですね、たとえば分類 (Classification) を考えると、今はシソーラスとか無いので
<MuseumObject> <hasClassification> <Classification> <rdf:value>絵画</rdf:value> </Classification> </hasClassification> </MuseumObject>
みたいに書くのかなと。分類クラス (ややこしい。これのインスタンスは一つの分類概念ってことです) の匿名リソースがあって、その値が「絵画」と。で、特定のシソーラスを使う場合、その名前空間が exterms とすると
<MuseumObject> <hasClassfication> <exterm:Painting> <rdfs:label>絵画</rdfs:label> </exterm:Painting> </hasClassification> </MuseumObject>
みたいにして、読むためには rdfs:label をつけるようになるんじゃないかという気がするわけです。そうすっと、さっきのシソーラスなしだと rdf:value で、ありだと rdfs:label っていうなんか変なことに。こういう場合って、最初のシソーラスなしの例がおかしくて、あっちでも rdfs:label に「絵画」とか書いといたほうがいい、と考えるべきなんすかね? Classification クラスのインスタンスは分類概念なんだから、それにラベルをつけるって考えるのが正しい? これが正しいような気がしてるんですが、どうなんだろう。むー。
あとあと、この hasClassification の range をどうするか。ヨソで定義された分類用語を使えるようにしておくには Classification を range にするんじゃなく rdfs:Resource を range にする必要がある、のか? (う、イマイチはっきり理解してないのが露呈した)
投稿者 ryoji : 06:12 PM | トラックバック
May 30, 2006
Every Object Tells A Story @ V & A
Every Object Tells A Story というプロジェクトを V & A がやってる、ということを今年の2月にあった国際シンポジウム「世界の現場から 今、博物館教育を問う -家族・学校・地域に向けての取り組み-」の報告書を読んで知りました (これ一般に刊行されるのかな? とても面白いです)。
「あなたにとって特別な "モノ" についてのお話を聞かせて下さい」ということで、一般ユーザからその人にとって特別な「モノ」とそれについてのストーリーを集めているプロジェクトです。いいなぁこういうの。素敵。
もう一つ、今 V & A でやってるモダニズム展では "Create Your Own Poster" として、用意された素材を使ってユーザがこのモダニズム展のポスター作り、登録できるというもの。なんだか結構適当にやってもモダニズムっぽいポスターになってくれます。みんなの作ったポスターのギャラリーも楽しい。
むー、やはりすごいな、V & A。
投稿者 ryoji : 12:01 AM | トラックバック
May 17, 2006
シンポジウム「ミュージアム・ドキュメンテーションの新時代」
6月3日(土)、4日(日)にアート・ドキュメンテーション学会の年次大会・シンポジウムをやるです。
第17回アート・ドキュメンテーション学会年次大会公開シンポジウム
「ミュージアム・ドキュメンテーションの新時代 ― 新しい風は、いつだって、西から吹いて来る ―」日程:2006年6月3日(土)、4日(日)
会場:九州国立博物館
主催:アート・ドキュメンテーション学会、九州国立博物館
オレ実行いいんちょ。プレッシャーでおなかいたいです。
というのはさておき、昨年オープンした九州国立博物館の情報担当の東さん・道脇さん、連想検索で有名な NII の高野先生、指定管理者制度が導入された長崎歴史文化博物館の竹内さん、という、かなり充実した内容です。(あ、あと僕もしゃべります)
九州は遠いかもしれませんが、九博の見学もあるし、5日(月)に時間のとれるかたは長崎へのオプショナル・ツアーも用意してます。おトクです。当日は結構ホテルが混んでる様子なので、参加される方は早めに予約したほうがヨサゲです。
投稿者 ryoji : 01:43 AM | コメント (2) | トラックバック
April 28, 2006
デジタルアーカイブ連続講演会の最終回
去年僕もお話させて頂いた、2005年度慶應義塾学事振興資金による研究課題 デジタルアーカイブ連続講演会の最終回に行ってきました。スピーカーは東近美の水谷さんと、この研究会を中心的にやってらっしゃる慶應大メディアセンターの入江さん。水谷さんは美術図書室の話題を中心にされていました。水谷さんのお話は何度か聴いたことがあるのですが、今回も勉強になりました。でもプレゼンの冒頭と末尾が高橋メソッドだったのには驚きつつ笑ってしまいました。
入江さんのお話は、セマンティック・ウェブとかメタデータとかがいろいろなコミュニティで注目されてきてて、こういう環境になってきて図書館どうしようか、というお話。慶應の図書館は日本で唯一 Research Libraries Group のメンバーでもあって、期待も大きいんですが、その RLG の人が慶應でやった講演のことなどにも触れつつ「アカデミック・コンテンツ」というキーワードを提示されていて興味深かったです。
この研究会は図書館・公文書館・博物館・美術館の人達がメタデータをネタに話をしていくという大変ユニークなものだったと思います。僕が博物館・美術館の情報を考えるときに、例えばプレーンな XML より RDF のほうが嬉しいよね、と思うのは、ミュージアムの情報っていうのがまさに多様な連携の可能性を秘めてると思うからなんですよね。モノがあるだけじゃなく、それにまつわる論文や書籍もあるし、イベントもやるし。だから、違うドメインやコミュニティのデータと連携する可能性があるんなら是非そっちへもって行きたい。というわけで、大変ためになった研究会でした。またこういう機会があれば是非。
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April 20, 2006
イベント情報のメタデータ
Google Calendar が話題になってるようなので、改めてイベント関連のメタデータをチェック。Google Calendar は Mac の iCal が web で使えるようになった、くらいの部分しか僕には見えてないです。(GMail 連携とかはアカウントないのでわからんです。Google Local 連携とかも良さげですが。でも GMail 連携って GMail のメッセージに追加データをつけられて、GMail で受けとるとそれを処理できて、ということですよね。MHC みたいになってると素敵なのに、とか思ってしまいました)
iCalendar が今のところ一番広く使われてるスケジュールのデータフォーマットなわけですが、独立したスケジュール専用のデータじゃなく、他の様々な情報と組み合わせてメタデータの枠組みでスケジュール情報を扱いたい、と。それで RSS 1.0 Modules: Event とか RDFical とか。ただ神崎正英さんも言っているように、RSS の mod event はイマイチっぽいところがあって、少なくとも目についたところでは RSS に スケジュール埋めこむのには RDFical のほうが使われてるように見えます (海外は未チェック)。このほか、microformats ということで hCalendar なんていうのもあるんですねー。小文字の semantic web なのはわかるんですが、これそんなに嬉しいかなぁ。でも、簡単な HTML なら書けるよ、という人があまり特殊なシステムを使わずにメタデータを出せるという意味では注目していいのかも。えーと、すごい具体的に思い描くなら、美術館のサイトで学芸員が管理してて、weblog ツールみたいなのを使ってるにせよ使ってないにせよ多少は HTML を書く必要があるっていうとこは結構あると思うんですよね。で、そこに microformats でメタデータ手書きってのは案外アリなのかも。いや、もうちょっとマシに、イベント情報を入力するとテンプレートに従って実際のページを出力するみたいなツールを使ってる場合でも、iCalendar とか別に出すよりは microformats のほうが断然楽だろうな、とは思います。
でもいずれにしろ、エンドユーザが (スケジュールソフトとかに取り込むとかして) 直接役に立てられる形式っていうと今のところは iCalendar だと思うので、やっぱりイベント情報を何らかの形でデータとして提供するなら、まずは iCalendar なんでしょうね。
ちなみに bloc は iCalendar だけでなく RDFical でも出力してくれますね。でも RDFical ってどれくらい使われてるんだろ? そしてどのように? 気になります。Tokyo Art Beat は RSS をいろいろ出してくれてるのはいいんだけれども、スケジュールデータは無し。せっかくちゃんとしたデータがあるんだから、RDFical とか埋め込んどいてくれれば iCalendar にして取り込めるのにね。超残念。
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April 08, 2006
MOT の podcasting
今ごろになって言及するのもアレですが、東京都現代美術館のサイトに Mot The GUIDE や Mot The RADIO として Podcasting で聞けるようになっていますね。ようやく聞いてみました。わりとちゃんと番組っぽく作ってあって、これは作るの大変そうー。でも音声ガイドが館外でも聞けるのはいいですね。僕は展覧会場で音声ガイドを聞くことは普通ないのですが (耳がつかれて作品に集中できないので)、展覧会の帰りの電車とかで聞くとよさそうな気が。
こんなにちゃんと作りこめなくても、ギャラリートークとかひょいと軽く録音して Podcasting するとことか増えるといいですね。んー、でもちょっと音が聞きづらいとかあるとすぐ文句言われたりするのかな。Web ページでも、どこの美術館でも字が小さいって言われるみたいだし。いろんなことがもっと軽くできるといいんですけどねー。
投稿者 ryoji : 04:48 PM | トラックバック
April 05, 2006
Stefano Mazzocchi 「メタデータの品質について」
Stefano Mazzocchi の「メタデータの品質について…」という文章を翻訳してみました。一貫したメタデータをもったデータセットでも、それらを組合せると低品質なメタデータになってしまう、という問題について述べています。結局、どうにかして典拠ファイルをうまく作る必要があるということではあるんでしょう (そしてライセンス重要)。問題はどうやって作るか、というかメタデータ作成と典拠作成をどうフィードバックさせていくかってことと、そういう「社会的」な努力がセマンティック・ウェブ界隈はもっと必要なんじゃないかという。でも "I know FRBR and I know it gets way worse than this,..." というのはよくわからないです。FRBR は解決にならないの? そういえばバーチャル国際典拠ファイルってどうなってるんだろう?
ええと、この Stefano Mazzocchi という人は、Simile プロジェクトの作った firefox 拡張 Piggy Bank (RDF のブタさん貯金箱。面白そう、今度試そう) や最初期の Apach Cocoon プロジェクトにも関わってた人なんですね。それに他にも Clay Shirky の Ontology is Overrated: Categories, Links, and Tags に反応して Folksologies: de-idealizing ontologies という文章を書いてたりして、とても勉強になるのです。たまにさりげなく CIDOC CRM に言及したりするし。
ちなみに Shirky の文章については日本語の解説がありますね。それとこれに対しては Clay Shirky's Viewpoints are Overrated とか Market populism in the folksonomies debate とか批判も結構あるようですが。
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December 22, 2005
美術館のデータベース2選
美術館のデータベースはできるだけ覗いてみるようにしてるんですが、その中から2つ。まずはSmithsonian | Freer & Sackler Galleries。ここはコレクションのデータを検索・閲覧できるだけでなく、ユーザ登録するとeGallery に自分で作品リストを作れます。ユーザ層があんまり想像できないんだけれども…。でも学校の先生が教材の準備したりするのにはいいかもしれません。んー、いやー、やっぱこういうのは、1館のコレクションではものたりないですよねー。がんばります(あれ?)。
もう一つは、The Metropolitan Museum of Art。ここは、その包括的なコレクションを使って、Timeline of Art History、つまり美術史年表を作ってしまうという。すげー。コレクションのデータベースと、年表と地図、それに解説文を組合せてて、これはかなり効果的という気がします。
美術館の所蔵品データベースって、僕はまずは「専門家の役に立つものが先」という考えですけど、ちょっとそういう順序を置いておくとすると、一般向けのサービスを考えるときに難しいのはやはり見せ方ですよね。検索できますったって、何検索していいかわからないってことも多いでしょうし。ブラウジングに適した見せかたの工夫というのは、あまりできているところは多くないと思います。そういう意味で参考になる2例でした。まぁ、アイデアとしては別に変わったものではないと思いますが、ちゃんと出来てるってことが大事ですしね。
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December 19, 2005
MetaCRM
CIDOC CRM の working draft のページに、MetaCRM というもののドラフトが。全然フォローできてないうちにこんなものが。うーむ、なんじゃこりゃ。
The "CIDOC MetaCRM" is a proposal to support categorical and cross-categorical information, as it appears characteristically in ethnology, natural history, archaeology and other sciences, by systematic logical derivation of metaclasses and metaproperties from the CIDOC CRM.
うむー。E55 Type が CIDOC CRM の中で特殊で、事実上メタクラスになっているというのは仕様にも書いてあったことですが、そのあたりを使って categorical information を扱う枠組みを考えよう、ということでいいのかな? あるクラスのインスタンスがどんな種類のものか、っていうと、OOPでは普通はそのクラスが種類を表してるみたいに考えると思うのですが、そういうのとの関係がいまいちわからないなー。
CIDOC CRM では Activity クラスのサブクラスに Acquisition (受入)とか Move (移動)とかがある。ある出来事が Acquisition のインスタンスなら、それは Acquisition という種類の出来事。だけど受入にもいろいろあって、購入とか寄贈とか借入とか出土とか発見とか、そういう categorical な情報がある。「購入」とか「寄贈」とかでそれぞれサブクラスを作るのは (理由ははっきりわからないけど) たぶん間違い。そしてこういう categorical な情報ってのは、CIDOC CRM を現実世界から見た場合、ほとんどすべてのクラスについてありそうな話で、そのあたりのサポートってこと、だと思うんだけど、あってるかなー…。
でもちょっと、ムツカシすぎるよー。人工知能とか知識処理とかやってる人じゃなきゃわかんなくない?
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December 07, 2005
研究方法論の抽象化
メモ。美術史であれ、美術批評であれ、というか美術に限らず、ある領域の研究には複数の方法論が歴史的に展開されてきてるのが普通なんだと思うのだけれど、そういう様々な方法論について横断的に分析した研究を探してちょっと勉強してみたい。横断的というより、抽象化かな。いろんな方法論を抽象化すると共通の枠組みが出てきたりするものなのかなぁ、とふと思った。そうすると、いろいろな方法論に共通する基盤とか、要素的な技法とかが見えたりしないのかな。うーんと、コンポーネントとかフレームワークとかデザイン・パターンみたいな? 個々の要素というのではなくて、構造として見えないとあんま意味ない気がするけど。
何言ってるのか自分でもよくわからないですが…。でもきっと何かあるよね。誰かやってるハズ。でもどうやって探そうかな。
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November 20, 2005
9年前の「来たるべきミュージアムに向けて」
InterCommunication No.15 (1996 Winter) に、「来たるべきミュージアムに向けて」という記事が載っていて、なんとなく雑誌を整理してるときに読んでしまいました。高階秀爾、浅田彰、伊藤俊治、彦坂裕の4人のトークです。とりわけ高階秀爾の発言が、なんかすげー正しいなーと(←偉そう)。
美術館で作品のデータを集める際の問題について、
美術館に限って話をすると、美術作品というのは非常に数多くあり、その作品一点一点についていろいろな情報があるわけです。作品の大きさ、材料という物理的な情報もあるし、いつどこででき、どう作品が移動したかという歴史的な情報もある。それはほとんど戸籍に匹敵すると思っているんです。(中略)そうすると、、例えばピカソ一人に対して、人口6、7万の都市の戸籍係と同じくらいの情報が要るわけです。(pp60-61)
またルーヴルなどでは、作品の情報の非常にこまごましたデータを、最初は手書きで、それからタイプライター、コピーとそれぞれの時代の方法で、とにかく蓄積してきてて、それを電子化している、と。
そういう蓄積がずっとあり、それを電子化しようという問題になってきた。日本は機械の方が先行していて ――それはそれでもちろんけっこうなんですが ―― 集める方、蓄積の方を忘れては具合が悪いですね。(p63)
というわけで、そういう作業をする体制なり人手 (registrar) が必要だという話はこの時点でもちゃんと出てるんですね。ということは、この頃と比べて全然状況は改善してないってことか…。そんな風に体系的に情報を蓄積してるところというのはなかなか…。どちらかというと「展覧会に出す」とか「あるコレクションを調査する」という、特定のモノについて集中的に調べあげるというきっかけがあって、その時にあちこちから情報をかきあつめてるというケースがほとんどではないでしょうか。継続的に日頃から蓄積している情報もあるとは思いますが、体系的に、そういう体制までととのえて、というところまでいってないんじゃないですかねー。
あとあと、専門的な情報を蓄積して、専門家向けに公開するというのが役所的な発想とかみあわせが悪いというようなことも言ってますね。役所というのは、集めたものは誰にでもアクセスできるようにするというのが基本だと。でもそうすると、非常に専門的な資料を集めて専門家だけにはちゃんと見せる、だけど中学生には見せない、というようなことがやりにくい、と。ま、実際彼が館長をやってた西洋美術館のライブラリーというのは、登録利用者が事前に予約して使うというスタイルになっているわけですが。
しかしここら辺は僕もちょっと思うところがあって、やはり専門家がちゃんと使えるデータをまともに蓄積するのがどう考えても最初だろうと思うんです。子ども向けとか教育プログラム用とかというのは、そこからの応用でしょうと。なんだけど、なんかデジタルなんとかとか言いだすと(偏見)、子どもやお年寄りでもわかりやすいコンテンツを作りましょうとかいって、最初の段階で編集しちゃう。編集を前提にデータを作るから、使いまわしができない。こういうふうに、とにかく出すものは必ず編集した後のもの、プレゼンテーションがつくられてるものでなければ、という風習(?)は、なかなか根が深いもののように思います。
おっしゃるように、ルーヴルがデリダなどに頼んでやっていることは、とにかくモノがありますから適当にやってくださいということ、これはエディトリアルの問題だと思うんです。エディットすること、つまりエディターに依頼することで、新しい見方が出てくるのではという試みですね。僕は美術館のひとつの役割はそれでいいと思うんです。そのためには、材料が全部揃ってなきゃいけない。(p65)
展覧会はエディットされたものなわけです。つまりあるオーダーを与えるということが行なわれていて、それが美術館の役割としてもちろん重要なんだけど、そうしないで、つまり生データを出すということにあまり価値が置かれないんですね。だから目録も作られない。このあたり、まあ博物館より博覧会が先にだったしねーとか、そういう歴史的経緯が尾を引いてるのかどうかはわかりませんが…。
ともかくまあ、素のデータを出したら誰かがエディットするかも、そこから何か出るかも、というのは、今の時点では相当現実味のある話だと思うんですよ。ほら、それこそ Web2.0 とか近ごろ言ってる話の中の、「User Add Value」とか「Some Rights Reserved」とか「Design for Participation」とかと同じで、やっぱり「ユーザは賢い」という前提で作るということも必要なはずだと思うのです。だってデータの使い方は、別の人が考えたって構わないわけですから。
とか、9年も前の雑誌記事なのに、やけにいろいろ考えさせられました。はい。
投稿者 ryoji : 12:22 AM | コメント (2) | トラックバック
November 18, 2005
日本美術情報センター
日本美術情報センターという NPO が設立されたそうですNPO設立に向けた準備室ができたそうです。(※12/6 訂正)
美術分野において、これまで一番おろそかにされてきた「美術情報の共有化・ネットワーク化」を推進するとともに、その担い手である「文献資料に精通した実務者」を育成するために、NPO法人日本美術情報センター設立準備室が、2005年9月、美術情報編纂に深く関係する人たちによって創設されました。
たのもしい。期待。
投稿者 ryoji : 01:03 AM | コメント (4) | トラックバック
November 12, 2005
公開研究会終了
「博物館情報処理に関する調査研究プロジェクト 公開研究会」というのを本日やりまして、無事終了しました。50人ほどの参加者で、やや会場が狭くなってしまい申し訳なかったです。が、関心を持っていただける方々の前でお話しさせてもらう機会というのは貴重ですね。自分のプレゼンも、まあそれなりにわかりやすくできたかな、という感触で、ホッとしてます。
ちなみに12月16日(金)にはじんもんこん2005 @ 東大でも発表する予定です。
投稿者 ryoji : 12:14 AM | トラックバック
November 05, 2005
ヒマ潰し2つ
ヒマなはずないんですけど(汗;)、ヒマ潰しというか、見てるうちに妙に時間がたってしまったもの。
Wikipedia の保護されたページで編集合戦の実際を読みふけってしまった (すごい不毛なことしてるなぁ、俺…)。いやもうなんというか、本当に下らないことで編集合戦になるんですね。常識があれば納得するよねってことを、すごい偏執的に何度も書きこむ人っているんだなあ。Wikipedia は、だいぶ前に「よくある批判への回答」の一部を訳したり、ちょこちょこっと記事を書いたりして以来、じっくり読むということがなかったのですが、妙なところでハマりましたよ。それにしてもすごい成長ぶりですよねぇ。
もう一つは、はてなアンテナで自分のページのおとなりページを見るというもの。ここに関心を持ってくれてる人が、他にどんなの読んでるのかなーと。はてな使ってる人は普通にチェックしてたりするんでしょうか。結構面白いです。
投稿者 ryoji : 11:35 PM | トラックバック
October 31, 2005
美術資料情報の基本問題 - 分類
難しすぎてほとんど考えがまとまっていないのですが…。避けてとおるわけにもいかないのがこの分類というやつ。
たった一つのジャンルに特化して、しかもコレクションの量が少ない、というような館を除けば、たいていの美術館では作品に分類を与えています。「絵画」「彫刻」「工芸」とか。あるいは「日本絵画」「西洋絵画」とか。余談ですが「日本画」というのは明治以降の言葉なので、明治以降のものに使われるのが通例なようです。それまで「やまと絵」とか「漢画」とかいってたのを「日本画」に一括しちゃったみたい (もちろん内実も変わります)。
もちろんコレクションの内容によって分類の方法、用語は違ってきます。版画がちょっとしかない館では「版画」という分類しかなくても、多ければ細かく分類するでしょう。つまり階層化することになりそうです。しかし自分がこれまで見てきた目録類では、公式な (資料番号などに反映されてるという意味で) 分類は一層しかないところが多いようです。それで、収蔵品目録なんかの「本の秩序」として下位分類が設定されることがあります。そんでそれは目録の中でだけ使われていたりするという。さらに言うと、目録等に表れる下位分類というのは、たいていいかにもアドホックなもので、一貫性がないことが多いです。絵画はまず地域で区切って(「日本」「中国」)それから時代で区切って(「江戸時代」「清朝」)るのに、考古遺物はまず時代で区切って(「縄文時代」)それから地域で区切って(「青森県」)たりします。たぶん、あまり気にしてないのでしょう。
それに、そもそもどうして分類する必要があるんでしょうか。図書館の場合、まず配架という現実的な制約があります。それにカードだって、主題別が使えたほうがいい。美術品の場合、目録のような冊子では何らかの秩序があったほうが便利でしょうが、展示空間は図書館の棚とは全然性質が違って、みんなが中を探しまわるというものではないですね。収蔵庫は、材質や大きさや形態に制約されるので、ある程度自然に似たものが同じ蔵に集められるでしょう。ただこれは僕たちが普通に理解している美術の「ジャンル」と常に重なるとは限りませんが。
しかしモノそのものから情報に目を向けてみると、やはり分類なしで情報を探すのは大変です。ある不動明王像の情報を探していて、掛幅も彫刻も根付も全部引っかかってしまうのでは、すごく使いづらそうです。なのでジャンルによる分類というのは、図書館の十進分類のような合意された標準がなくても、何かしらは必要でしょう。ただそれが相対的なものにすぎないということだけは押さえておく必要があります。どうせ客観的な分類などないのです。それに美術の分野には学術用語集もないですし、まぁ用語の揺れもしょうがないです(図書館の人はこういうのをすごく嫌がるけど)。英語なら Getty の AAT とかあるので使えるのかもしれません(でもアメリカでも美術図書館なんかでは AAT は使われてなくて、やっぱり LC とか使ってるそうです)。
美術分野のための主題分類というのがあれば使いたいと思ってる人は多いはずなのですが、全然実現しそうにありません。少なくとも日本では誰も本気でやろうとしてないようです (僕が知らないだけで誰かいるのかな?)。西洋美術だとイコノグラフィーの(たぶん)一つの成果として Iconclass というシステムがありますが…。日本では必要とされてないのかなー。あれば激しく便利そうですが。仏教美術とか文様のシソーラスみたいのが。でもこれは美術史の専門家が本気で頑張らないと絶対無理。
すみません、やっぱりとりとめなくなってしまいました。
投稿者 ryoji : 10:22 PM | コメント (6) | トラックバック
October 23, 2005
博物館情報処理に関する調査研究プロジェクト 公開研究会
というのを11月11日にやります。僕のほうからは、博物館資料に関する情報のモデルについてお話させていただく予定です。
東京国立博物館 お知らせに詳細があります。
投稿者 ryoji : 05:32 PM | トラックバック
October 17, 2005
美術資料情報の基本問題 - 資料番号
図書館にある本には、請求記号というのがついてますよね。あれと同じで、美術館にある作品にも普通その機関によって番号がつけられています。芸大美術館では「物品番号」、東近美だと「所蔵品番号」。うーむ、いきなり語彙がバラバラですが…。さらに東博では「列品番号」といいます。収蔵品のことを「列品」というんですよ。もう完全にジャーゴンですな。
それはさておき、以前にもふれた CDWA では Current Location - Repository Numbers の項で、
REPOSITORY NUMBERS are PRIMARY ACCESS POINTS.
と、やたら大文字を使って強調しています。実際そのとおりで、作品の名前というのは不安定でモノの最終的な同定には使えませんから、確かに非常に重要なわけです。CIDOC Information Categories でもやはり、Object Number として
Without an Object number it is not possible either to uniquely identify an object or to link an object with its documentation.
と言われています。ごく当然のこととして、管理している物に番号をふって一意に識別ができるようにすることは重要です、と。
さて、単純明快と思えるこの資料番号ってやつが、実はちょっとやっかいなところがあるんです。CDWA の先の引用の前後には、
There may be multiple identifiers associated with a workMultiple identifiers should be accommodated
とあります。また CIDOC IC にも、
Multiple numbers may be assigned to the object
とあって、こちらには Object Number と一緒になる情報として Object Number Type と Object Number Date があります。すなわち、いつ資料につけられた、どのような番号なのか、という記録を取ることが考えられているのです。資料の番号というのは、実は複数付けられることがあるのです。
具体的に見てみましょう。芸大美術館の仕事をしたときに経験したのは、分類の変更です。芸大美術館では、物品番号は作品の受入れによって付加されるのですが、その番号は分類ごとにつけられています (というか、台帳が分類ごとになっている)。『靴屋の親爺』は西洋画に分類されていましたが、2002年に重要文化財に指定されるとともに、文化財に分類が変更されました。したがって「西洋画9」と「文化財32」があり、後者が現在の番号なわけです。
東博のように3世紀にわたって続いてるようなところだと、さらにいろんなことが起きます。分類換えは当然ありますが、それ以前に分類体系そのものが変わっています (当初は天産部といって剥製などもあったらしいです…)。ま、ともかく、現在の体系になるのは昭和も後半になってからです。このときは東洋美術が別立ての分類になりました。また明治時代には「絵画」とか「彫刻」とかの用語ではなく、「一區二類」のような分類名が使われていたこともあります。ホントは『東京国立博物館百年史』とか調べるとちゃんとわかるのですが、ともかく何度も分類体系が変更されてきていて、その度に番号をつけかえたりとかいろいろしてるわけです。芸大美術館なんかはその点分類体系を変えてなくてエライなーと思います (そのかわり「東洋画真蹟」のような素人にはおすすめできない分類名が残ってるし、「雑美術工芸品」という「その他」を作ってしまってますが)。
分類が変わってなくても番号が変わることがあります。それは転出・転入。同じモノが一旦外に移管されて、何十年もしてから戻ってきたとき、元の番号は廃棄されて新しい番号がついたりするわけです。このあたりは、基本の台帳がどちらかというと会計上の資産管理をベースにしているというところに起因していそうな気がしますが。
で、ですね。古い番号は書きかえて新しい番号だけ残せばいいじゃないかと思うでしょ? ダメです。なぜか。先の『靴屋の親爺』は有名な作品で、これまでに何度となく展覧会に出されています。そのときの展覧会カタログには「西洋画9」となってるんです。出版された目録にもそう載っています。おそらく文化財に指定された後の年報などに新しい番号が載れば、それが公になった情報ということになるでしょうが、アクセスが難しい。だから古い番号が削除されてしまうと、探してる作品がどこにいったかわからなくなってしまう可能性が大きいのです。
さらに。貴重な (というかまあ、単価の高い) 美術品だけでなく、土器片だとか瓦だとかがドカドカ博物館で受入れられることがあります。資料番号は、モノそのものに書きこまれたり、シールに書いてつけられたりします。番号の変更があったとき、土器片とか瓦のような数の多いものまで手が回らないまま何年も経ってしまう、というのは現実的にありうることです。すると、モノに古い番号しか書いてない、なんてことになります。こういうことがあるので、古い番号をさっさと捨てるということができないのです。
さらに「枝番」という問題があります。受入れを基準にした資料番号をさらに細分化するためにつけられることがあります。東博だと極端な例として「松方コレクション」と呼ばれる浮世絵のコレクションがあるのですが、これは「絵画10569」という単一の番号がついてますけど、実は8000枚以上の浮世絵が含まれています。このあたりは記述の単位の問題ともかかわってくる部分です。展示の都合なんかでいい加減に枝番をつけてしまうと、後で別の人が同じモノに違う枝番をふってしまって整合がとれなくなるかもしれない。そして台帳のようなオーソライズされた記録になりにくい。だから軽視されがちなんですが、枝番がどうしても必要なときには、館としてその枝番をオーソライズする手続きが必要ではないかと思います。
しっかしなぁ。これって今までそうやってきちゃったから、なんですよねぇ。というわけで、過去を一切引き摺らずに今から美術館で作品に番号をつけようとしてるところがもしあるとするならば、
- 番号は分類とは無関係に、差別なくシリアルにつける。
- 番号は一度つけたら金輪際変えない。100年後も同じ番号を使うつもりで。
- 常識的な範囲で、可能なかぎり細かい単位で番号をつける。特に美術では「一括」はできるだけ避ける努力をしてほしい。
- 枝番をつけるときにはちゃんとオーソライズする。
と言いたいです。
投稿者 ryoji : 12:09 AM | トラックバック
October 08, 2005
美術情報プロフェッショナルのコア・コンピタンス
北米美術図書館協会 ARLIS/NA の Professional Development Committee から、Core Competencies for Art Information Professionals(pdf) という文書が出されています。美術図書館のライブラリアンや視覚資料の専門家の専門的な知識・技能をまとめたものですね。ふむふむ。
どうでもいいですが「コア・コンピタンス」って自分で書くのはじめてです (すっかりビジネス雑誌用語だと思っていた)。
投稿者 ryoji : 10:30 PM | トラックバック
August 08, 2005
CDWA Lite
ちょっと迷ったことがあって CDWA をなにげに参照してみたら、CDWA Lite なるものが。
CDWA Lite is an XML schema to describe core records for works of art and material culture based on the Categories for the Description of Works of Art (CDWA) and Cataloging Cultural Objects: A Guide to Describing Cultural Works and Their Images (CCO).
げーまじ。いつのまにそんなものを。ドラフトの PDF 読んどかなきゃ。でも XML schema なのかー。この分野は RDF 方面に流れる見込みが大きいと思っていたのに。ていうか OAI-PMH だからか。
投稿者 ryoji : 05:32 PM | トラックバック
July 17, 2005
美術資料情報の基本問題 - 名称
名称、またはタイトル、題名などと呼ばれる情報は、人間がモノを識別・同定 (identifiy) するのに最初の手掛りとなるものです。というか、普通我々は資料について話すときにそのモノの名前を使っているはずです。で、これがまた、よく考えると結構面倒なのです。
美術資料の名前というと普通「タイトル」とか「題名」とか言われるものが思いうかべられると思いますが、これは何でしょうか。近代以降の美術では、作者がタイトルをつけることが普通になったので (たぶん展覧会に出したりしはじめることと関わりがあるんでしょう)、作者がその作品を命名したときのその名前、がタイトルと認識されていると思います。これは結構みんな自分の好きなように名前をつけてますよね。伝統的には、絵画や彫刻の名前はそこに描かれた対象に基いてつけられています。西洋美術でもこれは同じ。
一方で、工芸品や建築の場合は、現代ではタイトルがつけられる場合もあるでしょうけれど (これも展覧会などの制度との関わりってあるんじゃないかと予想しますが)、「タイトル」とか「題名」とは違うかたちで名前がつけられます。建築の場合はその施設・組織から名前がつけられるでしょうし、工芸品の場合はそのモノの機能にもとづいて、どちらかというと一般名詞的に名前がつけられます。「織部焼角鉢」とかね。
このように一口に「名称」といっても、ミュージアムには固有名的な性質の「タイトル」と一般名的な「品名」とが併存しているのです。このあたりについて、CIDOC のガイドライン (CIDOC IC) では Object Name Information と Object Title Information とを区別していて、固有名と一般名をわけるべき、と示唆しています。一方、CDWA では Titles or Names という具合にこれは一緒にされていて、どのような名称なのかを Type を使って示す、という戦略です。日本美術の場合を考えると、そもそも西洋美術の伝統の枠組みでいうような Fine Art と Craft の区別が厳然としていないこともあって、日本美術的になされた命名をどちらか一方に分類するというのは無理があるように思います。「源氏物語絵巻」ならタイトルで、「初音蒔絵硯箱」なら品名すなわち一般名、というのはかなり違和感あります。じゃあ「初音蒔絵硯箱」はタイトルということでいいじゃないかとするなら、「火焔土器」はどうでしょうか。これをタイトルと呼ぶのはちょっとツライでしょう。でもその区別の基準はあいまいだと思います。
どのような名前なのか、という点も重要で、これは例えば「無題」または「Untitled」の扱いに影響します。ふたたび CDWA によれば、
Do not use the word Untitled as a title unless the work has intentionally been called Untitled by the creator.
といっていて、作者が「無題」とつけたのか単に題が不詳なのかが区別できなければいかん、というわけです。ごもっとも。
名称についてもう一つ問題なのは、その名称の Authority です。「その作品の正式なタイトルは何か」という問いがなされる場面ってあると思うのですが、「正式」ということで何を意味しているかというと、それは権威付けされた (Authorized) 名称をさしているわけです。たぶんこういう問いが期待しているのは「俗に <大ガラス> と呼ばれるデュシャンの作品の正式なタイトルは <彼女の独身者たちによって裸にされた花嫁、さえも> である (またはそのフランス語の原題である)」というような答でしょう。これは作者がつけたタイトルですから、その権威の源泉として作者が想定されているわけです。では作者が名前をつけなかった場合にはどうか。これは後世の人が名前をつけることになります。たとえばコレクター、たとえば博物館、たとえば文化庁。博物館所蔵の品の場合、おそらく所蔵館がつけた名前が権威あるものとして期待されるでしょう。ところが、これが実は一定していないのです。名前がコロコロ変わる。
展覧会ごとに、あるは出版物ごとに、違った名前が使われてしまうことが多いのです。まず一番多いのは表記ゆれ。旧字・新字や送り仮名のあつかいが一つの館でも統一されてないことが多いです。つぎに表現方法。ある時は「阿弥陀三尊像」、別の時には「阿弥陀如来および両脇侍像」と呼ばれたりします。展覧会の性質によって表示する名称が違ってくることもあるでしょう。このあたりは担当者に一貫した名称を使用するという意識そのものがないことが原因になることも多いでしょうが、バリエーションはないけれども名前が変わる、というケースもあります。例えば従来「如意輪観音像」と呼ばれてきたけれども、イコノグラフィー的に間違いが判明して実は如意輪じゃなかった、ということになるかもしれない。作者だって名前をつけかえることがあります。初出展覧会のときには A というタイトルで出したが、後年 B として発表した、とか。
しかもこうして様々につけられた名前というのが、美術史的にというか、受容史的には面白いネタになるかもしれないでしょ? 特に昔、江戸時代とか室町時代とかに何と呼ばれてたかわかったりすると面白いことがありそうです。だから過去につけられた名前をあっさり捨てるわけにもいかないのです。あるいは過去の文献を元にして現在の情報を探そうとしたときに、過去の情報と何もつながりがなくなってしまうと困る。少なくとも名前くらいは辿れたほうがいいでしょう、と思うわけです。ということで、美術資料の名称は、一つのモノでも複数の名があり、それぞれの名はそれぞれ違った背景・コンテクスト・事情でつけられたもので、それがどのような名前であるのかがわかるのが大事、とまとめられるでしょう。つけ加えるならば、その名が確認できる典拠が示されるとなお良いでしょう。
ところで古美術の命名は慣習的に行われているのですが、文化庁で指定文化財につける名前のスタイルというのがあります。重要文化財とか国宝として指定され、その台帳に載る名前なので、これはわりに権威があると言えるでしょう。名前を決めるのにも、かなり議論をして決めると聞いています。がぁ、これがやたら長いんですわ。たとえば「紙本墨画淡彩四季山水図」とか、「白地葵紋紫腰替辻が花染小袖」とか。よーく見てもらえばわかるんですが、色 (白地)、材料 (紙本)、文様 (葵)、技法 (墨画淡彩、辻が花染)、主題 (四季山水)、形態 (小袖)、などなどの情報がつめこまれてるんです。名前を見れば、だいたいモノの様子がわかる、という意味で合理的ではありますが、ちょっと慣れないと馴染みにくいですよね。
投稿者 ryoji : 02:07 PM | コメント (4) | トラックバック
July 08, 2005
美術資料情報の基本問題 - 単位
美術資料、いわゆる作品の情報について、どういう形でデータを採録するかといったことを考えるときに、考慮しなくてはならない基本的な問題がいくつかあります。その中でも根本的なものの一つとして、資料の単位について、言い換えれば「一つの作品」とは何か、というものがあります。ここで問われるのは「作品」じゃなくて「一つ」のほうです。普通、作品の情報というのは作品一つずつとることになるのですが、その「一つ」って何だ、という問題。
額に入った油絵なんかでは、たいてい一つの物体が一つの作品になっているので、比較的迷うことが少ないないかもしれません。しかし物理的にいくつかの物体からなる作品というのは結構あります。例えば一双の屏風は右隻・左隻の2つの物体からなる。仏像で三尊像だと3躯ある。上中下の3巻からなる絵巻。先の油絵だって、例えば三幅対を1つの作品とみるか3つの関連する作品とみるかは自明ではないでしょう。
一応、こういうよくあるパターンについては慣例的に一まとまりで一つの作品とみなすことも多いようです。その場合、各物体はその部分であると見做されます。でも上とは逆のパターンもあって、複数の作品と見做しうるものが一つの物体にまとまってるものとかもあるんですよね。例えば、尾形光琳の「風神雷神図屏風」の裏に酒井抱一が「夏秋草図屏風」を描いていたりします。これは今では別々にされていますが、かつては一体でした。あるいはかつて着物だった古い布切れを切って、屏風に貼り付けたりパッチワークみたいにしたものとかもある。もともとは直接関係のない能書家や宗教家の手紙を何通かまとめて一巻の巻物に仕立てたものもある。さて、ここにはいくつの作品があるのでしょうか。
さらに考古遺物を考えると、例えばコナゴナになってる土器片はどうするのか。何個分の土器が復元できるか見当もつかなかったりするわけです。ほかにも、誰かが亡くなって遺品を歴史的資料として博物館に寄贈する、ということはよくあるのですが、ダンボール何箱分もの資料の中に手紙もあればノートもあれば標本もあれば写真もある、とかね。で、この辺になると「一括資料」として特に数を云々しない場合が結構あるようです。それで「そちらの館には何件の資料があるのか」という問い合わせには大変答えにくいことになってしまうという。
というわけで、おそらく資料情報をとる単位というのは「その都度任意に決める」としかできないだろうと。資料に対する関心のあり方によって違ってくるところもあるし。細かいデータが必要なら、例えば婚礼用具一式の中の箪笥一つ、化粧道具一つ、というふうにとることもあるでしょう。そうでなければ一式まとめてデータをとることもあるでしょう。そこらへんは先験的に決めておくことはちょっと難しいだろうと思っています。美術館なんかでは資料の貸し借りがありますが、例えば鎧と兜で一具としてデータをとっておいても、兜だけ貸してほしい、なんてこともあるわけで、兜だけについて例えば保険のための評価額を出すとかしないといけないかもしれない。10枚組でデータをとった水彩画のうち1枚だけをある時展示したとしたら、作品保護のためにその1枚だけはしばらく時間が経つまで展示しない、ということになるかもしれない。このように、あらかじめ決めておいたとおりに資料情報が運用できるとは限りません。あと出来るのは、そうやって同じものについて異なるレベルでデータが作られたとき、その間の階層関係を維持する方法を考えるとか、そういう方向になってくるでしょう。
美術館・博物館のような組織に限っていえば、多少とも客観的で一貫性のある単位として、買取や寄贈によって受け入れたときのまとまりというのは使えるでしょう。あるまとまりに対してお金を払ったりしてるわけですから、それを一つの単位とみることには正当性がありそうです。資料番号なんかもおおむね受け入れと整合するように付けられているようですし。ただ先の一括資料のようなこともあるし、本来一つの作品として扱いたいものでも予算運用の都合で去年は1巻から5巻、今年は6巻から12巻を購入、なんてケースもおそらくあるでしょう。ひょっとすると、受入記録がほとんど残っていない個人の膨大なコレクションがまずあって、そのために作られた資料館とかもあるかもしれません (うーん、これはたぶん実際にあるな)。
Getty Research Institute の Categories for the Description of Works of Art では、どういうレベルでとられたデータなのか、item なのか group なのかなどを Object/Work の Catalog Level に記録せよ、ということになっています。レベルの選び方については
The level of specificity at which an art object, architecture, or group of works is described will depend on the practice of the individual institution.
また、
The whole/part designation of the work may be relative and changeable.
とも。だからまあそういうことです。しかしレベルについて item とか group とか collection とか書くことが required とされてるのはどうなんだろう? うーん、まあ日本語だと、員数 (ものの数) のデータに助数詞がつくので、「六曲一双」とか「3幅」とかあれば記述のレベルがわかりますね。
ああっ! "Revisions are currently ongoing through Summer 2005" って書いてある! これ今まさに改訂してんのかー。
あとちょっと自分の領域からはずれるのですが、文書(もんじょ)方面というかアーカイブズのほうでは「出所原則」というのがあって、資料の出所が基本的なまとまりになるようです。このまとまりを「フォンド」と呼んでいて、ある個人や組織の活動のなかで形成されてきた資料の総体として尊重しなさいと。違うフォンドに含まれる資料同士を混ぜたりくっつけたりしちゃ駄目なんだそうです。
なんかすごい散漫になってしまいましたが、こんな単純そうなことでも結構問題があるということで。