December 30, 2009
2009年に印象に残った展覧会
今年もそんなに沢山は観られなかったのですが、強く印象に残った展覧会がいくつかあったので備忘を兼ねて。
まず筆頭に挙げたいのは、「画家の眼差し、レンズの眼」@神奈川県立近代美術館葉山館です。19世紀の日本で洋画、写真、印刷の受容が一挙に進んでいくという時代の背景の中で、それらが美術とどのように関わりあっていったのかを検証したもの。メディア環境と視覚の変容という興味深いテーマを真正面から扱った展覧会で、自分にとっては発見も多く、非常にわくわくする展覧会でした。ここしばらく、近代日本美術については、様々な角度からの再検証が行われて展覧会などで成果を見せてくれていますが、この展覧会もそうしたものの一つとして素晴しいと思いました。もう、これこれ、こういうの観たいんだよ僕は!という感じです。
次に、年末に観たばかりなので印象が強いというのもありますが、「文化資源としての<炭鉱>展」@目黒区美術館。こちらはあちこちで話題になっていたとおりで、炭鉱という主題からのアプローチがこれほど豊かに結実するとは、単純に驚きました。元坑夫の絵の率直な眼差しの強さや、画家や写真家が炭鉱に見たものの広がりが、ストレートに伝わってきて、展覧会にはこんなこともできるんだなぁ、と思わされました。
それから東京国立近代美術館での「ヴィデオを待ちながら」。ビデオアートを自分が勉強していたこともあって、ある程度背景は頭に入っていた状態で観たというのもありますが。しかし単純に、カタログや図版では作品の様子がほとんど掴めないビデオアート作品をまとめて観られる機会として、とても貴重だったと思います。またカタログにもロザリンド・クラウスらの論文が載っていますが、やはりフォルマリズム以後の批評との関わりという面でも、かなり知的な面白さもありました。
また、コレクション展で特によかったと思うのは「かたちは、うつる」@国立西洋美術館です。50周年記念事業のこの展覧会では、同館が形成してきた版画コレクションを「うつる」というキーワードを手がかりに俯瞰しようとするものです。「うつる/うつす」というのは日本語ですが、映像(この言葉もまたピッタリ重なる英語には訳せませんが)というものの性質をよく表しているし、それを複製技術である版画において観ていくのもうまく嵌っていたと思います。完成度の高いコレクション展でした。まあ単純にデューラーすげー、ゴヤすげー、というのもありますが。
最後にもう一つ挙げるとするなら、「純粋なる形象 ディーター・ラムスの時代」@府中市美術館でしょうか。ラムスの考え方やスケッチや原則も面白かったのですが。それよりなにより、もうとにかくかわいい。欲しい。このプラスチックの質感がっ!みたいな個人的なフェティスズムを刺激されまくりの展覧会でした。
特に強く印象が残ってるというと、だいたいこのあたりでしょうか。やはり基本的には、なにかチャレンジングなところのある展覧会が観ていて面白いです。出品されている作品の良さと、展覧会としての面白さはやはり別というところがあって。素晴しい作品との出会いも嬉しいものですが、それと同じくらい知的な刺激があったり思考を促されたりする展覧会が好きなんですよね。来年もそういう展覧会をたくさん観たいものです。
投稿者 ryoji : 11:33 AM | トラックバック
December 15, 2007
日本彫刻の近代@東京国立近代美術館
日本彫刻の近代@東京国立近代美術館を観てきました。明治から60年代くらいまでの日本の彫刻をクロノロジカルに一覧するという、ありそうであまりない企画展。意外なほど興味深い展示でした。日本の彫刻を時系列でまとめて見るというのは、実はそんなに機会がないんですよね。だから、たとえばこういう歴史的な流れの中に舟越保武とか柳原義達とか、あるいは佐藤忠良などの作品を置いてみると、なるほどこういう風に見えてくるのかー、というか。
個人的な興味としては、やはり近代に彫刻というジャンルが受容されていく過程が面白かったですね。高村光雲の「老猿」から展示は始まっているんですが、光雲という人は仏師として修行して、彫刻家というよりは「木彫職人」としてやっていた人なんですね。だから工芸品というか、「置き物」としての「木彫り(きぼり)」から木造彫刻へと、つまりは西洋的な彫刻の価値観を受容していく過程での様々が、非常に興味を引かれるものでした。
で、カタログ所収の論文で言及されていた高村光雲『幕末維新懐古談』(岩波文庫)を購入してしまいました。こ、これが面白い…。ホント彫刻の芸術家というよりは江戸の職人といった風で、実にその語りに魅力が溢れています。たとえば、廃仏毀釈で仏師の仕事が減り、かわりに輸出産業としての彫物で象牙彫りが流行し、旭玉山などが売れているころ、象牙彫りを勧められた光雲はこんな風に断わっています。
「かねて師匠から小刀を讓られて、今さら、今日に及び生計のためと申して、その家業の木彫りを棄てて牙彫りをやるというわけには参りません。打ち開けたお話をすれば、全く、私は、象牙を嫌なんです。イヤなのです。どうか、私の趣意をお察し下すって、こればかりは他の方へお廻しを願いたい」
この本を読んで光雲の彫刻を見ると、また一層違った味わいがありそうです。
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May 04, 2007
『イタリア・ルネサンスの版画』展 @ 国立西洋美術館
国立西洋美術館の企画展『チューリヒ工科大学版画素描館の所蔵作品によるイタリア・ルネサンスの版画―ルネサンス美術を広めたニュー・メディア』を観てきました。スイスのチューリッヒ工科大学が所蔵している版画のコレクションから、イタリア・ルネサンス期の版画を通じて、美術のメディアとしての版画を観ていこうという、まあかなりマニアックな企画といっていいでしょう。非常に濃い内容でした。というか、企画の内容に関心があればかなり楽しめるんじゃないかと思います。展覧会タイトルを観ても「それ何の話?」という人には全然オススメできません。というくらいマニアックですね。
絵画の一ジャンルとしての版画、という目で見るぶんには、何といってもデューラーがどれほどずばぬけた技量の持ち主かということが、まざまざと見せつけられる思いがしました。参考出品(なのでカタログには載ってない)として《アダムとエヴァ》が出ていて、これが同時代のヴェネツィアの(デューラーはヴェネツィアに行ってたので)版画家ヤーコポ・デ・バルバラのものなんかと並べてあったんですが、あまりにも密度も完成度も違います。エングレーヴィングの一本の線が版画に絵としてどういう効果をもたらすか、計算しつくしている感じです。版画的な表現というものに、相当意識的に取り組んでいたことが窺われます。
しかしデューラーほどの技量ではないとしても、イタリアの版画家たちのものもとても面白いです。展覧会の趣旨としてそういう見方ができるよう構成されていたのですが、版画によって絵のデザインが流通することによって、様々な構成や背景のパーツ、人物のポーズなどが、複雑に伝搬していくようすが見られて、大変興味深いです。版画の発達は印刷術の普及と時期的に重なりますし、そうして大量のイメージが各地へと流通していって、そこから画家たちが色々なパーツをサンプリングしたりしながら新たな創作に役立てていたわけですね。以前のアビ・ヴァールブルクの展覧会を思い出したりしました。
そんな、絵の流通メディアとしての版画という捉え方が面白いですね。ラファエロなんかは、わざわざ版画用に素描を作って、版画を販売させてたそうです。画家にとってはプロモーションのツールにもなっていたのかもしれませんね。ルネサンス期の版画がそういう役割を担っていたことは、これまでの西美の展覧会でも、版画の流通に影響を受けた作品なんかが出てると時々言及されていましたが、こうしてそれが主題になって展覧会を見ることができてよかったです。
しかも連休なのに空いてたのがまた良かったです(笑)。あとカタログが超素晴しく充実してます。すごい。
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March 30, 2007
「鳥獣人物戯画巻」がキュートすぎる
今、東京国立博物館では特別展「レオナルド・ダ・ヴィンチ ― 天才の実像」が開催されていて、本館特別5室に展示されている「受胎告知」が大変な人気をあつめています。で、これから行かれる方についでに是非オススメしたいのは、本館の平常展です。一つは下絵の特集陳列。絵師たちが構想を練った下絵から、その軌跡が見えるようで、大変興味深いものです。特に、狩野栄川古信の下絵に吉宗が手を入れて、鷹の背中が見えすぎるとか爪が長すぎるとか細かい注文が入ったものがあったりして、暴れん坊将軍はなかなかウルサ型だなとか(違)、こういうのは面白いです。
で、もう一つは4月22日まで展示されている「鳥獣人物戯画巻」の甲巻です。あのアレです。これは是非。なんか先日展示室を覗いたらあまり人が多くなかったので、ゆっくり見るチャンスではないかと。みんながレオナルドに夢中になってる間にしっかり楽しめるんじゃないでしょうか。
いやそれにしても、これはキュートすぎる…。生き生きとした動物たち、みんな顔が笑ってるんですよねー。かわいいー。僕は、帽子をかぶったウサギの耳が左右に垂れてるという絵にやられてしまいましたよ…。
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February 26, 2007
『人間国宝 松田権六の世界』 @ 東近美
『人間国宝 松田権六の世界』 @ 東近美を、最終日に観に行きました。意外と、といってはなんですが、混んでて見るのに一苦労でしたが、行ってよかったと思います。芸大美術館に所蔵の作品はいくつか観たことがあるんですが、まとめて観るのには良い機会でした。
松田は加賀蒔絵の伝統に育ち、楽浪漆器や中尊寺金色堂の保存修復などを通じて古典を研究し、光琳を高く評価した人でしたが、そうしたバックグラウンドに関わる展示が導入にあり、そこから主要な作品の展示へと繋っていく形でした。東近美には結構収蔵されてるようなんですが、蒔絵福寿草文小盆(画像なし)という作品があって、これもかなり完成度が高いんですね。でもなんと16歳、高校生のときの作品なんだそうです。なんだよそれ…。まぁ7歳のときに手習いを始めてるそうなので、この頃もうすでに10年近くやってるわけですが。東京美術学校に進むころには、地元の加賀蒔絵の技法はほぼ習得していたといいます。
『草花鳥獣文小手箱』は美校の卒制です。鳥や兎、鹿が一斉に逃げまどう蓋外の意匠は、内側の獅子の一吼に驚く様子。しゃれてます。この卒制は満点をとったそうなんですが、「芸術に満点はありえない」と松田自身が返上を申し出たとかなんとか。
細やかな技巧はきっと、とてつもない根気と集中力が必要なんだろうな、と思います。『鶴蒔絵硯箱』の鶴の白い部分は、なんとウズラの卵の殻だそうです。普通はニワトリを使うらしいんですが、繊細な味わいが欲しかったとかで、2000個ものウズラの卵が必要だったそうで…オソロシイ。
この人の作品の魅力は、やはり図案だと思います。植物や鳥や動物が、とてものびやかに描かれていて、それが細かい螺鈿や研ぎ出し蒔絵の鋭さに、やさしい柔らかさを与えているように思います。かわいいんですよねー。僕は『鶺鴒文平棗』がとても好きなんですが、画像がなくて残念。なんつーか、うまいんですよ、絵が。松田の図案は絵画的というか。図案から色々な意味を読みとる楽しみがあるような、趣向性というようなものも、やまと絵の伝統からの影響のようですが。で、毎日つけていたという「図案日誌」も展示されていて、これも面白いものでした。ごく普通の手帳に、日々図案を書きつらねていたんだそうです。また写生をよくしたそうで、そういう鍛錬が、こんなのびやかで繊細な図案に結実してるんでしょう。
また大作『蓬莱之棚』(画像)は昭和19年、戦況が悪化する中で、最後の作品になってもいいというつもりで作られたもので、大変緊張感のある、しかしどこか浮世離れしたような、不思議な趣きのある作品です。意匠も亀山天皇の和歌を散らすなどして、趣向が凝っていて楽しませてくれます。ほかにも、時代碗の研究をもとに制作された一連の碗なども、ちょっとこちらは図版では魅力がよくわからないと思うのですが、よいものでした。たくさんの棗もどれもかわいらしかったし。
ちょっと残念というか勝手に期待してたけど観れなかったのは、工業製品との関りでしょうか。輸出用の高級万年筆に蒔絵をしたりしてたことがあるそうなので、そこらへんも観れればよかったなぁ、と。でもまあ、おなか一杯です。満足でした。
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November 23, 2006
「揺らぐ近代 日本画と洋画のはざまに」 @ 東京国立近代美術館
「揺らぐ近代 日本画と洋画のはざまに」 @ 東京国立近代美術館を観てきました。祝日にしては全然混雑してなくて(淋しい)、とてもゆっくり観られてよかったです。
この展覧会は、明治以後「日本画」「洋画」というふうに絵画に2つのジャンルが制度として確立していった中でも、個々の画家たちの創作はそういう二分法にあっさり納まるはずもなく、様々に絵画そのものを模索していった、その様子を作品を通じて観ていこう、というものです。いわゆる近代絵画の名品だけを並べることでは見えてこなかった、画家たちの様々な試みや迷いや意気込みといったものが伝わってくる、とてもとても興味深い展覧会です。素晴しい。
自分的には「エッ!あの人がこんな絵を!?」みたいな驚きが沢山あって、そういう意味でとても楽しめました。ええ、ある程度近代の画家の名前と代表的な作品を知ってる人には、いろいろと驚きがあるんじゃないでしょうか(逆に、充分に詳しい人には良く知られているのかもしれませんが)。例えば、荒木寛畝というと、僕はこの「鶏」のような絵を思い浮かべるし、もちろん日本画の人と思ってたんですが、実は高橋由一、五姓田義松と並んで油絵三名家と称されたそうで、「狸」という油彩の作品が出てました(東博にあるのに全然知らなかった…)。とか、「白雲紅樹」のような作品で知られる日本画の橋本雅邦が、海軍時代に描いた油絵「水雷命中之図」とか。やはり日本画で知られる川端玉章の油彩の植物画とか。あるいは、代表作「収穫」で知られる油絵の浅井忠が、ほとんどマンガみたいな桃太郎の掛け軸(2幅のうち左に桃太郎と猿、犬、雉、右にうなだれる鬼たち)を描いていたりとか。小林古径の油彩とか。もう、そういうのが一杯で、すんごい面白かったですよ。
岸田劉生のみっちり描きこむ絵が速水御舟など日本画家たちに影響を与えてたというのも面白いです。劉生の絵だけでなく、それに影響を受けた他の画家たちの作品を並べて観ていくことで、劉生の存在感を改めて認識させられます。
そうそう、劉生といえば、今回「野童女」(このページの中ごろに画像があります)が出ていたのですが、劉生日記によると、これは顔輝の寒山拾得図のうちの寒山に着想したものなんだそうです。面白いなあ。あとそうそう、下村観山の「魚藍観音」という作品、観音の顔がモロにモナリザで、なんだかすごいですよ~。
最後のほうにあった川端龍子の「龍巻」も強烈なインパクトのある作品でした。僕はこの人のことよく知らなかったのですが、なんか「爆弾散華」とかが妙に記憶に残っていて、気になる画家ではあります。前に江戸博でやってたの観に行けばよかった…。一番最後は、僕も大好きな熊谷守一。日本画と油絵それぞれで描かれた「鯤」、最高です。
というわけで、非常に楽しめる内容でした。なんというか、展示を観ながら「あ、この人ってあの絵の人だっけ?」とか「この人の典型的な作品ってどんなだっけ?」とか「同じ画題でこんな絵があったはずだと思うんだけど、誰だっけ?」とか、自分の記憶力の弱さを痛感しながら観ましたよ。いや、つまり、そういうふうに観ながらクロス・リファレンスしたくなるような内容だったわけで、それがとても楽しいです。会場で観ながらいろいろ検索したくなってしまった…。いずれにせよ、近代日本美術に関心のある人ならきっと面白がれるであろう、大変充実した内容です。ゆっくり見すぎで常設が観られず。また今度行こうっと。
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October 01, 2006
国宝 風神雷神図屏風 @ 出光美術館
先週の話なんですが、出光美術館の『国宝 風神雷神図屏風』を観てきました。何といっても俵屋宗達の「風神雷神図屏風」が見てみたかったので。やはり、さすがに良い絵ですね。おおらかなようでしかも緊張感があって。また、宗達の絵を模写した尾形光琳の「風神雷神図屏風」、さらにそれを模写した酒井抱一の「風神雷神図屏風」もあわせて見ることができるという、大変貴重な機会だったので、行ってよかったです。もう今日で終わりなので、今さら紹介するのもアレなんですが…。
展示もとても工夫されていて、パネルを使ってそれぞれの細部を比較していたりして興味深かったです。光琳のものは宗達の絵にほぼ重なるのに対して、抱一のものはそれ程ぴったりは重ならないこととか。顔や布の表現の変化とか。それから、この宗達の風神・雷神の図が、北野天神縁起絵巻に現われる雷神に非常によく似ているということもパネルでわかりやすく説明されていて、とても面白かったです。
ここに出ていた光琳の風神雷神の裏に描かれていた抱一の傑作「夏秋草図屏風」を先日見たばかりでもありましたし、充分楽しめました。
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June 11, 2006
北欧のスタイリッシュ・デザイン @ 東京都庭園美術館
「ディナーセットを粉砕せよ!」というわけで(違)、『北欧のスタイリッシュ・デザイン―フィンランドのアラビア窯』 @ 東京都庭園美術館を観てきました。滋賀県立陶芸の森で昨年3月に始まった巡回展の東京展、ってことでいいのかな。タイトルの通り、フィンランドの代表的な窯である Arabia のデザインを紹介する展覧会です。雨のわりに人も入っていて、さすがに北欧デザインは人気なのだなぁと。Arabia は Kaj Frank の Kilta を元にした Teema シリーズなんかが我が家でもだいぶ重宝してます。
1873年創業だそうで、そんなにすごい古いわけでもないんですね。初期のものは中国風の陶器とか、わりにもっさりしてるんですが、アールデコあたりから急に洗練されてくるんですね。面白い。全体としてはやっぱり、意外ともっさり、というか華麗さや繊細さよりも、暖かみがあって親しみやすいって感じですよね。かわいい。
Paratiisi シリーズの Birger Kaipiainen や、Raija Uosikkinen の絵付けは、とてもいいですね。デザイナーの名前を知らなかったし、あまり意識していなかったのですが、僕はこの2人の作品はすごく好きです。でも、もちろん Arabia と言えば Kaj Franck。こうして並べてみると、上の世代の Kurt Ekholm のデザインも機能主義的で綺麗なんですが、Kaj Franck のはやはりずば抜けて洗練されてますね。くー。あとやっぱり、機能的で廉価なものっていう近代デザインの理念をきちっと実現してて、ウチみたいな庶民の生活も豊かにしてくれちゃうところが何といっても Arabia の素晴しいところですよね。
現代の作家では、Heljä Liukko-Sundström の「言葉のないお話」からのウォールプレートが気に入りました。可愛いくてオソロシイ。ウサギを擬人化した寓意的な絵柄で、なんとなく Goya の Caprichos を連想してしまいました。
というわけで楽しめたのですが、うーん、そこもうちょっとkwsk! ってところが結構あって、もうちょっと突込んでてくれたらよかったのになー。同時代の陶芸の状況とか、他の北欧デザインの流れとの関係とか…。ちょっぴり物足りない気持ちが残ってしまいました (最近は庭園美術館での展覧会には無闇に期待してしまうのです…)。あ、そうそうムーミンものもちゃんと出てます。3階に展示されてた個人蔵のコレクションなんかは、指を咥えて「ほしー」となってる人がかなりいると思われます。
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May 07, 2006
『東京―ベルリン/ベルリン―東京』 @ 森美術館
『東京―ベルリン/ベルリン―東京』展 @ 森美術館 を観てきました。日本からの出品は、わりとこの数年で他の展覧会で観た記憶のある作品が多くて、「再考:日本の近代絵画で観た」とか「写美の10周年記念に出てた」とか、ちょっと遡るけど「水戸芸の日本の前衛で観た」とか、なんだか神経衰弱みたいな見方をしてしまいました。
展覧会としてというのは置いておいて、タウトの桂離宮のノートとか、水谷武彦の作品とかはこれまで自分は観る機会がなかったので、そういう点では行って良かったですね。あと今和次郎という人、あまりよく知らなかったんですが、すげーオモロイ。くくく。それからボイス (没後20周年になるんですね) とパイクが草月会館でやったパフォーマンスの映像がかなり楽しめました。コヨーテ! モールス信号? なんだかよくわかりませんが。キャプションに年代がなかったんですが、84年でいいのかな? その隣にあった「ザワークラウト総譜」を弾くボイスの写真はウケてしまいました。ググってみると、こんな本人のコメントが。
全体性原則及び人間の独立性を呼びかけるためには、書きつらねられた文字にしがみついて楽譜を完全に再現するようなそのようなコンサートをおこなうのではなく、人間誰もが持っている独自の音楽性に戻ることが必要なのです。譜面台のコンサートではなく、キャベツによってコンサートをおこなう。このほうが、はるかに優れているのです。無批判に受け継がれてきたかたちにとらわれることはありません。 ボイスと川俣 ― 反全体芸術について
こう聴くとなんだかすごい。すごくない? いやすごいって。だってキャベツ (しかも酸っぱい) だもの。
ところで六本木ヒルズはデザインが悪くて道に迷うので、いつもイラつきますよ…。滅多に行かないからいいけど。
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March 28, 2006
『メディア・アートの先駆者 山口勝弘展 「実験工房」からテアトリーヌまで』 @ 神奈川県立近代美術館
日曜に、神奈川県立近代美術館:開催中の展覧会>『メディア・アートの先駆者 山口勝弘展 「実験工房」からテアトリーヌまで』 @ 神奈川県立近代美術館を見てきました。僕が大学一年生のときが山口勝弘の最終年度だったので、あまり直接的に影響は受けてないのですが、僕も一応総合造形出身だし、ということで。まとめて作品を観るのはつくば美術館での回顧展以来ですし、写真でしか見たことのなかったもの (《ラス・メニーナス考》とか) もあったので、会期ぎりぎりでしたが行けてよかったです。
そして予想どおり知人 (複数) に遭遇。そんなところで紹介されたり紹介したり。
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December 24, 2005
「アート&テクノロジーの過去と未来」展 @ ICC
つづいて、「アート&テクノロジーの過去と未来」展 @ ICC を観てきました。「ビデオひろば」や実験工房などの資料は、なかなか見る機会がなかったので、貴重でした。でもビデオは、立ったままゆっくり見る気になれず。もうおじさんなので。
よく知らなかったんですが、佐藤慶次郎の作品がわりと好みでした。あと江渡浩一郎「Modulobe」、クワクボリョウタ「fluid」がわかりよくてよかった。藤幡正樹「脱着するリアリティ」と「トルソ」「禁断の果実」は、実を言うと現物見るのは初めてだったんですが、さすが説得力あるなー。それにしても、ちょっと思ったのですが「この作品なんなんだろ?」と思ってキャプションを読んだときに、前置きが長いとイライラしてしまいますね。んで、気づくとキャプションの2、3段落目くらいから「この作品では」という文字列をサーチして、その周辺だけ拾い読みしてるという。うーむ、なんだか…。
帰りに受付で聞いてみると、やはり今回の展覧会の後は何も予定がないようですね。次の展覧会の予定については「お答えできません」とのこと (困らせてすみません、受付の人)。いつまでそうなのかも不明のようで。結局何のアナウンスもしないまま無期限休業に入るということですよね…。僕は ICC は応援したいですよ。でも、ちょっとひどくないですか? 社会的責任とかどうなんでしょうか? 署名に応じた人達には説明はあったんでしょうか(ご存知の方いらしたら、ポインタ教えてほしいです)? お休みの間、コレクションは死蔵されるということでしょうか。
いやホント、なぜ「しばらくお休みします。再開時期は未定です」くらいアナウンスできないのでしょうか…。謎です。
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『吉村順三建築展』 @ 東京藝術大学大学美術館
『吉村順三建築展』 @ 東京藝術大学大学美術館を観てきました。カンバンでかっ!
いやー、すごく施工の大変そうな展示でした。吉村順三については、あまり知らなかったのですが、なんというか、住んでみたいなーと思わせる趣味のいい住宅建築が多かったですね。モダンなデザインで、かつ落ちついている。亀倉雄策や猪熊弦一郎の住宅も手がけていたのも興味を引かれました。いいないいなー、ああいう家に住みたいなー。
図録が完売だったのが残念! あと建築系の展覧会って、いかにも建築やってそうな人の割合がすごく高いですよね。今回もそんな雰囲気の展示室内でした。
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December 18, 2005
『ドイツ写真の現在』 @ 東京国立近代美術館
『ドイツ写真の現在 ― かわりゆく「現実」と向かいあうために』 @ 東京国立近代美術館を観てきました。最終日にしては空いてて、しっかり観ることができましたよー。ちょっと寂しい気もしますけど。Bernd & Hilla Becher と Wolfgang Tillmans 以外の出品作家は全然知らなかったので、新鮮でした。Michael Schmidt の新聞などからとられたイメージとの組み合わせで見せていた作品『統・一』などは、展示の仕方によってかなり印象が違いそうですね。あと Beate Gutschow の一見普通の風景写真のように見えて実は合成しまくり、という作品も興味をひかれました。他の作品も観たいなー。
と、『アウグスト・ザンダー展』のほか、常設展示もあらためてざっと。横山大観の「生々流転」の特別公開、岸田劉生「道路と土手と塀(切通之写生)」は、少し前に『講座 日本美術史(3) 図像の意味』で読んでたりしたので、あらためてじっくりと。うーむ、みっちり描いてある…。あとあと、あら? っとなったのが安井曾太郎の「金蓉」で、修復されてました。ずいぶん印象違うなー。
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November 12, 2005
『宮殿とモスクの至宝 ― V&A 美術館所蔵イスラム美術展』 @ 世田谷美術館
あまり見てないものを見てみよう、ということで、『宮殿とモスクの至宝 ― V&A 美術館所蔵イスラム美術展』 @ 世田谷美術館を観てきました。Victoria & Albert Museum のイスラム美術ギャラリーが改装され、2006年夏に「ジャミール・ギャラリー」としてオープンするのにあわせた国際巡回展です。
偶像崇拝がタブーのイスラム圏の美術って、絵画や彫刻よりも工芸がとても発展してるんですよね。今回の展覧会も、陶磁器、金工や染織を中心にしたものでした。あ、そうそう、あとガラスね。観てて特に興味を引かれたのは、まず「聖なる言葉:文字の意匠」と題された展示室。クルアーンからの引用や、パトロンを称えた言葉、所有者のための吉祥の言葉などが、様々な工芸品にデザインとして組みこまれていたのが大変面白かったです。クルアーンの写本のタイポグラフィも面白いし(あー、これ読めたらなぁ…)、タイルや瓶、剣などに、色々な形で使われているんですよね。アラビア文字独特の文様的な形態が、草花文などに馴染むようにして一体になってるという感じで。
それから、こないだ『華麗なる伊万里、雅の京焼』を観たせいというのもあると思いますが、陶磁器もおもしろい。中国磁器のあの大人気ない透明感のある白がほしくて、「フリットウェア」と呼ばれる技法が産まれて、白い陶器に色をのせて似せて作ったりしたんですね。中国の磁器ってホントに世界中で真似されてきたんですねー。あとイスラムの陶器といえば、あの特徴的なラスター彩。虹色にキラキラとしていて目を楽しませてくれます。
図像表現と宗教との関係についても、まったく図像表現が使われなかったわけではなくて、宗教施設とは関係のない日用品では結構使われてたことなどもわかりました。あと王朝ごとに様式が対立するように変わっていくというのも興味深いですね。モノとしていいなーと思ったのは、タイル製の天板がついたテーブル。タイルもターコイズブルーとアクセントに赤で綺麗だし、脚は黒檀に象嵌の凝ったつくりで、ちょっぴり螺鈿もついてるというもの。それとそれと、金工では瓶とかが結構出てたんですけど、法隆寺伝来の竜首水瓶とか思いだしてしまいました。そういやガラス器とかもあっちのほうから来たものが伝わってるんですよねー…。
てなわけで、楽しめました。カタログは V&A で作られたものを翻訳したものですが、日本の展覧会カタログとちょっと趣きが違って、全体を通した解説になっていた、読み物として読んでもかなり勉強になりそうです。
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October 30, 2005
庭園植物記 @ 東京都庭園美術館
『非水百花譜』イイ! というわけで、庭園植物記 @ 東京都庭園美術館を観てきました。幕末から現代まで、様々なテーマで植物を扱った作品等をみていく内容なのですが、やはり幕末~明治期のものが大変面白かったです。
横山松三郎は写真家としてしか知らなかったのですが、油絵や石版もやってたんですねー。蕃書調所・開成所の高橋由一や島霞谷の図譜は写生帖のような感じなのに対して、小石川植物園や東京博物館(今の科博)の図譜はもうちょっと図鑑っぽかったりする(描きかたが科学してるというか。学名や採集地を書いたラベルが貼ってあったりするし。まぁそれは後からつけたのかもですが)のも面白かったです。小川一真の写真も、Karl Blossfeldtとか思い出してしまう。でも小川一真の写真は帝室博物館のものと牧野富太郎が作った標本を撮影したものとでは全然違ってて、これも興味深かったですねー。牧野の標本の写真はもちろん、すでに標本としてその「見方」の枠組みが整えられたものなので、その違いなのですが。同様に、牧野の図というのはとても西洋的な描写方法になっているのも面白いと思いました。牧野が尊敬していたという飯沼慾斎の図譜は江戸時代のものなので、当然絵の描き方が日本的だし本の作りも江戸時代の本そのもの。でもそこでリンネの分類法が使われているというのがなんだか不思議な感覚です。こういう本の姿って好き。結構早くに入ってたんですね、リンネの分類学って。で、そこらへんの絵の視角と科学の視角の関係みたいなところがもっと知りたいと思いました。
キノコの標本や胞子を貼りつけた南方熊楠の図はなんだかハイパーでした。すげー。あとカタログの論文に出てたのですが、『東洋花鳥写真集』が展示されていた岡本東洋が竹内栖鳳に6、7千枚の写真を送ってたという話もびっくり。
杉浦非水の『非水百花譜』は、多色木版の本図と影図、それに写真つきの解説がセットになっている、図案集兼植物図鑑のようなものなの。これいいです。こういう本欲しい…。日本のアール・ヌーヴォー 1900-1923:工芸とデザインの新時代 @ 東京国立近代美術館工芸館でも取り上げられてるのかな? やっぱりこちらも観にいきたいです。浅井忠の『訂正 浅井自在画臨本』でも、写生と図案とあわせて写真も貼られていてます。図案教育のための本なのですが、写真、写生、図案と比較することで、図案制作という抽象化の段階を見せようとしていて興味深いです。また富本憲吉も写真を元に図をつくり、そこから染付けの皿を作っていたりします。これが面白いのは、図のあとに自身で「以上六種の模様は自から写真機を以て実物を撮したるものより 模様を造り得との考えを試みに種々の方面より研究したる最初の図巻なり」と書いていて、非常に意識的に方法論としてやっているところです。これらはどれも、すごいシステマティックに新しい手法を探求してるし、まさにミクストメディアっていうか、複合的なんですよねー。うーむ。
と展示前半に興奮しすぎて、後半は流しぎみになってしまいました…。でも面白かったです。庭園美術館、自分好みの展示が続いてて目がはなせません。
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September 19, 2005
『ドレスデン国立美術館展 - 世界の鏡』@国立西洋美術館
日曜日に、『ドレスデン国立美術館展 - 世界の鏡』を国立西洋美術館に見にいきました。最終日直前ということで行列、40分待ちという結構ツラい状態でしたが、観る時間は充分とれたので満足です。
ポスターなどからすると、フェルメール、レンブラント、ティツィアーノあたりの絵画が目玉のようでしたが、個人的には工芸品のコレクションが大変興味深かったです。最初のセクションの科学のための道具、測量用具や製図用具が、真鍮製で鍍金されていたりして過剰なほどの装飾を施されていたのが面白かったです。屈折望遠鏡とか見ながら、どんな旋盤使ってたんだろー、とか偏った鑑賞をしてしまいました。それからデューラーの『測定法教則』の有名な挿図って木版だったんですね! 全然知りませんでした。ていうか完全に銅版だとしか思ってませんでした。
やきもの方面でも、マイセン磁器と日本の有田焼・伊万里、中国の徳化などの白磁を並べてみせた展示も大変わかりやすくてよかったと思います。中国の白磁をまねて作られたマイセンがすぐ隣りにならんでいると、やはりかなり質感が違うのがわかりますね。マイセンのものは若干アイボリーがかっていて、中国の白磁は青みがかっていて透明感がある、というように。それにしても注文をうけて有田で生産されたというジョッキについていた大きな「B」の文字が「ビールのB」っていうのは、かなり脱力しましたよ…。
あとはローズカット・ダイヤモンドのコレクションには自分も含めて皆が釘付けになってたのがおかしかった。あれはまさに、目がくらみます。あとフェルメールは好きなので『窓辺で手紙を読む若い女』はよかった。図版で観るより硬質な感じですね。
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September 04, 2005
写真はものの見方をどのように変えてきたか @ 東京都写真美術館
東京都写真美術館の開館10周年特別企画展「写真はものの見方をどのように変えてきたか」の第3部「再生」を観てきました。もうこのシリーズは全部観るつもりなんですが、つい会期終了に近くなってしまいます…。第3部は「12人の写真家たちと戦争」、ということで、戦前から戦中・戦後を通して活動した写真家を木村伊兵衛をはじめ12人ピックアップして、それぞれの足跡を辿る、というもので、写真史全体を俯瞰するような第1部、第2部とはまた違った趣向になっている展示でした。対象を絞ったぶんテーマが全面に出ていて、今回も興味深く観ることができたと思います。
第1部、第2部にくらべて時代・地域とも近づいてきているせいもあるのでしょうけれど、東京の写真なんかを観てると、自然と「これはあそこらへんかなー、あの建物は今もあるやつだなー」とか考えてしまいます。戦争と写真、ということでもっと重々しいものというか、戦火の生々しい写真とか戦争の悲惨を記録した写真とかをなんとなく想像していたところもあるんですが、あくまで「戦争という状況下における写真家とその表現活動」が中心になっている感じで、反戦教育的なところがあまり無かったのが良かったのではないかな、と思います。
次回も楽しみです。
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July 11, 2005
写真はものの見方をどのように変えてきたか @ 東京都写真美術館
また最終日だよ! 東京都写真美術館の開館10周年特別企画展「写真はものの見方をどのように変えてきたか」の第2部「創造」を見てきました。ピクトリアリズムからストレート・フォト、バウハウスや日本の新興写真、というように19世紀末から戦前までを中心に、芸術としての写真、というか写真の芸術性についてなされた様々な試行錯誤が辿れる展示でした。前回もそうですが、この第2部も非常に充実したものでした。素晴しい。それにしても、東京都写真美術館ってかなり包括的なコレクションを持ってるんですね。こういう機会に、よく考えられたコレクションが十二分に活かされいると感じます。
余談というか自分の仕事柄ちょっと気がついたこと。写真の展示のときはいつもそうだったかどうか思い出せないのですが、キャプションの「技法」の欄には、基本的にプリントの方法が書いてあるんですね。「ゼラチン・シルバープリント」とか。ソフトフォーカスレンズを使ったとか、ディストーションとかソラリゼーションとか、モンタージュとかいう言葉は説明文の中には出てくるけれども、「技法」欄にはないのですよね。これはそこで「作品」とされているものは、その「プリントという物体」だからなのでしょうかね。いわゆる芸術写真で一番大事なモノ、というか真正性が問題になるのは「オリジナルプリント」なのだと聞いたことがありますが、そういうこととも関係あるかも。ひるがえって写真集とか見ると、あまりプリント方法について言及されていなかったりしますよね。そこ(写真集)における作品はきっと「像そのもの」という抽象的なものなのかもしれません。…というようなことについてまとまった文章があれば読んでみたいです。
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June 28, 2005
千と千尋と柴田是真
『柴田是真-明治宮殿の天井画と写生帖』 @ 東京藝術大学大学美術館を観ました。良かった。映画『千と千尋の神隠し』(dir. 宮崎駿) の湯屋のモデルは目黒雅叙園なんだそうで。ここは鏑木清方とその弟子たちが室内装飾を担当。で、この目黒雅叙園のモデルが明治宮殿 (現在の皇居とほぼ同じ位置にあったそうです。昭和20年に戦災により焼失)。明治宮殿の千種之間 (ちぐさのま。「千」つながりだ…) 天井画の下絵を描いたのが柴田是真というわけなのです。その下絵と、是真の写生帖が展示されています。花丸の下絵はとてもいいです。綴織が焼失したのは大変残念。画帖の絵も魅力的でした。工芸家の下図とか写生って、結構好きなんですよね。楽しめました。
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June 27, 2005
谷口吉生のミュージアム @ オペラシティーアートギャラリー
MUSEUMS BY YOSHIO TANIGUCHI 谷口吉生のミュージアム、またしても行くのが最終日になってしまいましたが。MoMA のリニューアルに関連する模型や図面、MoMA の建物の変遷を見せるパネルなどがまず一つ。図面は学生と覚しき若い人達が熱心に見いってました。
それから日本各所で谷口が設計したミュージアムの模型とパネルの展示。建築の展覧会って、どうしても模型とパネルで無味乾燥になりがちと思うのですが、この展示は大変すっきりしていて気持よく見られました。MoMA も行きたいけど広島市環境局中工場も面白そう、丸亀市猪熊弦一郎現代美術館も行ってみたい。東博の法隆寺宝物館はとても素敵な建物なので(本当)、他もいいんだろうなあ、と。あ、とりあえず近場で葛西臨海水族園に行かなくてわ。水族館好きだし。模型とパネルの他に映像の上映もやってましたが、こちらもあまりうるさくなく建物をすっきり見せていてよかったですね。
コリドールでやってた中岡真珠美の作品もわりと好みでしたし、満足。
ついでに Open Nature @ ICC。難解ですた。ていうかこれの作品、どう「良い」のかなぁ。でも「スパイラル・ジェッティ」のビデオくらいちゃんと観ればよかったかもー。
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May 30, 2005
上野で展覧会2つ
『アール・デコ展』 @ 東京都美術館 は、予想は多少していましたが、やはり趣味に合わないということを再確認しました。すぐにお腹いっぱい。だめだなぁ、好きになれません。フランク・ロイド・ライトとかは好きなんですけどねぇ。あとベークライトやアルミといった当時の新素材の使い方がちょっと興味を引かれはしましたが。
と、もう一つ『ジョルジュ・ド・ラ・トゥール展』 @ 国立西洋美術館を。どうも絵そのもの以上に謎解き的な関心の的になってるような感のあるラ・トゥールですが、実物は初めて観ました。もっとこう、カラヴァッジォみたく強烈でドラマチックでガッチリした絵なのかと勝手に思い込んでいたのですが、意外に素朴…。「聖ヨセフの夢」は良かったですが、うーん、これほどの評価の理由が自分にはよくわかりませんでした。あと、模作がこんなに多い展示も珍しいかもしれません。
週末終わり。
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May 20, 2005
『ロシア児童文学の世界―昔話から現代の作品まで』 @ 国際子ども図書館
職場の近くの国際子ども図書館でやってる『ロシア児童文学の世界―昔話から現代の作品まで』を、昨日昼休みに観てきました。小ぢんまりした展示でしたが、かわいい作品が多く、よかったです。もちろん目当てはロシア・アヴァンギャルドのものだったわけですが、リシツキーの『2つの正方形の物語』、マヤコフスキー『海と灯台についての私の本』などが観られました。リシツキーのこの絵本って、知らなかったんですが「黒い正方形を赤い正方形がやっつける」(つまり革命)という物語なんですね。なんか、この抽象化の仕方ってスゲーなぁ。
あと良く知られたお話が結構ロシアのものがあるもんなんだなー、という再発見がけっこうありました。「せむしの仔馬」とか。それと翻訳が見事すぎて誰もが覚えている
うんとこしょ どっこいしょ
それでもかぶは ぬけません
の「おおきなかぶ」もロシアのものなんですね。原書もとってもかわいいのですが、改めて日本語版を見てみると絵がなんと佐藤忠良。わー!…と、びっくりしました。それから関連資料で展示してあったのが昭和初期の日本のテクノロジーネタ(機関車とか)の絵本。村山知義とかが絵を描いたりしてます。ほほぉ。…とまぁ、かなり楽しめた展示でした。無料ですし、近くに寄ったらちょっと覗いてみてはいかがでしょうか。
それにしても、庭園美術館での幻のロシア絵本 1920-1930年代展を見逃がしたのが今さらのように悔やまれます。うー。
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May 16, 2005
写真はものの見方をどのように変えてきたか @ 東京都写真美術館
東京都写真美術館の開館10周年特別企画展「写真はものの見方をどのように変えてきたか」の第1部を観てきました。非常に充実した、すばらしい内容でした。写美のコレクションで、これだけのものを構成できるとは、ちょっとした驚きでした。「えーそんなの持ってたの」というような、有名な作品/資料がかなりあります。タルボットの『自然の鉛筆』やマクシム・デュ・カンの『エジプト・ヌビア・パレスチナ・シリア』は、プリントだけでなく冊子も展示されているので、『自然の鉛筆』なんかだと開いてあるページの文章も読めます。技術的な説明や撮影状況の説明なんかがちょうど見えてたのですが、あれ、もっと読みたいなぁ。タルボット自身が自分の写真をどのようにとらえ、見せようとしてたのかがわかる興味深い資料だと思いました。
ここら辺って、ある意味教科書的なところもあるわけですが、実物を見るとやはり印刷物ではわからない面もかなりあるなー、と。写真史の本とか今はたくさんあるけれど、ダゲレオタイプの銀のギラギラした感じ、その像のシャープさがもつある種異様なもの。あるいは幕末から明治にかけて日本で撮られた肖像写真が、どんな箱(フレーム?)に入ってるかとか(桐かな?)、そのように写真が入っている姿というか様子、蓋の裏の書き込み(箱書きのようなもの?)とか。モノの質感や大きさからくる感覚とか、作品の「本体」以外の部分っていうのは、本や写真集を見てても現物にあたらなければわからないものですからね。貴重な機会だし、写真史に関心のある人は見のがせない展示だと思います。
やっぱりその館が自前のコレクションの研究をした展覧会って面白くなりますよねー。キャプションがかなり詳細に書かれているので、じっくり写真のディティールを観察しながら読んでいくのがとても面白かったです。
あとついでに「超[メタ]ヴィジュアル-映像・知覚の未来学」も。タムラサトルの 7kg TIGER がイイですね。さすが。
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May 01, 2005
唐絵の屏風 @ 根津美術館
最近、日本美術史をにわか勉強しているのですが、本だけ読んでいてもしかたないので、ちょっとモノを見よう、ということで、唐絵の屏風という展覧会を根津美術館でやっていたので、見てきました。やはり多少知識を仕入れているときに見ると見え方が違ってきて楽しいですね。
根津美術館はコレクションの質も高いですが、庭園がまた立派です。表参道でお買い物、なんてときに一休みに寄ると (ちょっと歩きますが) いいですよね。
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April 14, 2005
『ベルリンの至宝展』 @ 東京国立博物館
特別展『世界遺産・博物館島 ベルリンの至宝展―よみがえる美の聖域― 』の展示をようやく観ました(展示には直接関わってないので…)。ラファエロやレンブラントといった有名な画家の絵画作品ももちろん素晴しいのですが、一番印象に残ったのは古代エジプト美術。ベルリンのコレクションはアマルナ美術が有名なんだそうですが、僕は古代エジプト美術ってまともに実物を見る機会がこれまであまりなくて、図版で古代エジプト美術ってあー、あのあーいうやつね、くらいにしか思ってなかったのですが。すごいです。存在感が。どおーん。博物館で見るだけでこれほど迫力があるなら、現地はきっとものすごいに違いない。と思いました。
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March 21, 2005
日本のジュエリー100年展 @ 東京都庭園美術館
私達の装身具:1850-1950 日本のジュエリー100年展を観てきました。渋い展覧会で、面白かったですよー。「ジュエリー」といっても、宝石よりもむしろ明治から戦前にかけての工芸、とくに金工、漆工の実用的・産業的な面に光をあてた展覧会という面が強いように思いました。というかまぁ、アクセサリーですね。でも例えば
明治期の最大の課題が不平等条約の改正であったとすれば、洋装化のひとつとしてジュエリーのもつ意味も決して小さくはない。さらに、明治5年の行幸に際しては、天皇自らが「洋服を著してその範を垂示」するなど、洋装化には時代の変化を国民の目に印象づける意味もあったのである。 (同展カタログ、p.63)
とか、やはりここでも明治天皇と近代化政策みたいなトピックが出てきたりして、骨太なところもあり、よかったです。
もちろん、モノも結構面白くて、東都の四季写真蒔絵櫛・笄 (たまたま違うサイトで見つけてしまった) という、「写真蒔絵」なんていう技法によるものがあったりして。へーへーって感じ。写ってるのは寛永寺らしいですね。あとやはり自分の好みからすると文明開花系の図案がもう素敵すぎます。「電線にツバメ図銀蒔絵べっ甲櫛」とか「電灯かんざし」とか「ラッパかんざし」とか、蝙蝠傘の図案の櫛とか!もう!うひょーー!…って、すみません、どうしてもアレゲなものに目がいってしまいます。でも別に悪趣味じゃないんですよ、ホント。「電線にツバメ図」なんかは図案としての完成度はかなり高いんじゃないかと思います(個人的には、ですが)。
もちろんモロモロの超絶的な技巧を凝らした品やユーモラスなデザインの数々は観てて飽きませんでしたが、あと面白かったのはやはり図案。面相でチマチマ描いてある動物なんかが、すごいかわいかったりして。小さく上手に描くって難しそうですが、うーむ素晴しき職人技。あといくつか図案を並べて描いてあって、そのうち一つに「決定」とか書きこまれてたりするものがあって、どうもプレゼン資料にしてクライアントに見せてたらしい、というのもあったりして興味深いです。
戦時期の貴金属召し上げ(「金の飾りは銃後の恥辱」、「きょうから金の国調」、ともに神戸大学付属図書館の新聞記事文庫。すばらしい)を乗りこえて残ってきた貴重な品々でもあるわけで、そういう意味でも考えさせられる所のある展覧会でした。
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マルセル・デュシャンと20世紀美術 @ 横浜美術館
もう終わってしまいそうだったので、マルセル・デュシャンと20世紀美術 @ 横浜美術館を見てきました。再制作のものなどが多いものの、デュシャンのよく知られた作品をまとめて観る機会にはよかったと思います。
デュシャンの作品と、それらに影響受けたり引用をしたりした作品が並べられていたりするのですが、そのことが逆にデュシャンのユニークさを際立たせていたように見えました。特に一連のレディ・メイドをそう感じたのですが、デュシャンの作品って、あんまり芸術芸術してないっていうか。レディ・メイドは当然なのかもしれませんが、他の作品でも多かれ少なかれそういう印象を受けました。他の作家と並べてみたときに、まるでデュシャンだけ違うルールでプレイしてるみたいな違和感があるというか。特に自転車の車輪。ほんとに味も香りもなくて見てても新聞紙を噛んでるみたい。いいとかよくないとか考えても意味ないなっていう。確かにある意味すごいかも。
『デュシャンは語る』からの引用がところどころ壁面に書かれていたのですが、この本を読んだときに、あーこの人は芸術より幸福のほうがずっと大事だったんだな、という感想を持ったのを思いだしました。アートに関する発言は全般的に覚めてるんですが、でもそのことにとても満足しているような。生き方としていいよな、こういうの、と思いました。
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February 28, 2005
『河野鷹思のグラフィック・デザイン』 @ 東京国立近代美術館
こないだの日曜に、東京国立近代美術館で『河野鷹思のグラフィック・デザイン』を観てきました。最終日の閉館間際ということであわただしく観てしまいましたが、なかなか素敵でしたよ。自分の好みからすると、やはり1930年代の映画のポスターあたりから、雑誌『NIPPON』あたりがイイですね。村山知義とか、あの辺の時代のものの雰囲気ってなんか好きなんですよね。あと戦後のものでは、「さかな」シリーズがかわいくて好きです。
『痕跡 ― 戦後美術における身体と思考』のほうもわたわたと観ましたが、カタログが買えず(売り切れ)、しかも出品リストも今回は作ってない(ナゼー?!)とのことで、ちょっと気になったアノ作品が誰のなんて作品だったのか、もうわかりません…。しくしくしく。
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January 12, 2005
唐招提寺展
明日オープンの「唐招提寺展」の内覧会を覗いてみました。やあすげえ。国宝の盧舎那仏坐像って結構デカいんですが、よく運んだなぁこんなの。それにこれ脱活乾漆造ってことは、中は空洞でもろいんだと思うけど、こんな遠くまではるばるとまぁ大変なもんです。
ちょうど覗きにいったときには鑑真和上坐像の前でお坊さんたちが並んでお経をあげてました。唐招提寺の修理が終ったら(だいぶ先だけど)現地でも観てみたいです。
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January 11, 2005
武蔵野美術大学助手展
こないだまでの同僚たちが「[RA'05] 武蔵野美術大学助手研究発表」ということで展覧会やるです。僕も出品(研究ノートの冊子化という形で)する予定ではあったんですが、まあその前に転職したので。これも観に行ければ行きたいです。
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Project the Projectors 04-05
芸大の先端芸術表現科の修了制作展「Project the Projectors 04-05 台東」と卒業制作展「Project the Projectors 04-05 横浜」が始まるようですな。メモ。しかしこのタイトル、去年と同じだなぁ。あいさつ文も去年のとそっくりだし。大丈夫かおい。ちゃんと考えてる?
それにあれだ、去年の卒展のサイトはなんかドメイン名が不明になってるし。記録はどうしたんだろ? 今年のだって、なんでわざわざ横浜と台東で別々のドメインとるんだろ。これも1年たたないうちに消えるんだろーか。名前のつけかたも違うし。もう俺こういうのすげー気持ち悪いです。ま、展示の内容とは関係ないと思うけど。観にいければいくつもりです。